日整会広報室ニュース第77号2009.4.15
頚椎捻挫の病態と治療戦略 Ⅱ:画像検査ー価値と限界ー 慶応大学整形外科 松本守雄
より一部引用
健常者と急性期頚椎捻挫患者(各約500例) のMRI所見を比較したわれわれの検討では、椎間板後方突出、脊髄圧迫などの権間板変性所見は両群とも加齢とともに高頻度となり、両群間に有意な頻度差は無かった。
また、MRI所見と患者の臨床症状との間には有意な関連を認めなかった。 このように急性期頚椎捻挫患者のMRI上の椎間板変性所見や脊能圧迫所見は外傷性の変化というより、むしろほとんどの場合、加齢変化と考えるのが要当である。
われわれはこれらの建常者と頚椎捻挫患者を10年間追跡調査したが、調査時、頚椎捻挫患者で頚部痛の頻度が有意に高かったものの、MRIにおける椎間板後方突出などの頻度には両群間に差がなかった。
慢性例、症状遷延化例におけるMRIの意義についても明らかではない。
明らかな他覚的神経症状を呈する患者に対するMRIの必要性については異論がないと考えられるが、不定愁訴的な症状が持続する患者ではMRI上、 有意な所見が得られない場合が多い。
最近、慢性期患者において上位頚椎の深層伸筋群で脂肪変性度が有意に高いことや、慢性期頚椎捻挫患者の有症状者では翼状靭帯などの上位頚椎靭帯損傷が健常者より有意に高頻度に認められたとする報告もあり、 これらの所見には今後も注目していく必要があろう。
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私は30年を超える臨床経験で「頚椎捻挫で明らかな他覚的神経症状を呈する患者」を経験したことがない。すべて筋筋膜性疼痛症候群だったといってもよいだろう。