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心療整形外科

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2009年 04月 26日

痛みの診断の特殊性

痛みはexperience(体験、経験)と定義されています。
An unpleasant sensory and emotional experience associated with
actual or potential tissue damage, or described in terms of such
damage.


つまり他人の見た夢と同じなんです。

「私は痛みを感じている」「私は怖い夢をみている」はどちらも他人の体験(experience)なのでそれを否定することはできません。

痛みを診断するということは厳密にいうと不可能なことかもしれません。他人がなぜ怖い夢をみているのか診断できないのと同じことなんです。

腰痛の85%は原因不明というのはある意味正しいかもしれません。しかし原因が分かっていると思っている15%も実は分かっていないのでしょう。

「あなたはヘルニアによって神経が圧迫を受けているので怖い夢を見ているのです。」と医師に告げられればそれを取り除かないかぎり怖い夢が止まらないかもしれません。

「あなたは筋肉が緊張して怖い夢を見ているのです。」と医師に告げられれば掲示板だけでも治る可能性はあるのです。

はっきりいって痛みを診断するということは特殊なことなのです。

まず、痛みを伴うことがある特異的な疾患を除外することから始めます。(除外診断)

悪性腫瘍、感染症、骨折など明らかな外傷、リウマチ及びその周辺の炎症性疾患が特異的な病理を示す疾患です。これは画像や血液検査で判断します。

これらの疾患は痛みの治療と並行して原疾患の治療にあたらなくてはなりません。

ヘルニアや脊柱管狭窄、軟骨変性は老化とともにだれでも起きることで特異的な病理所見があるものではありません。だから痛みの治療だけでいいということになります。

除外診断の次は積極的診断をします。これはどのような環境、どのような条件、どのような体勢、どのような動作で痛みがでるか、あるいは痛みが強くなるかを見るわけです。

ラセーグテスト、スパーリングテスト、ケンプテストなどは神経学的検査ではなく疼痛誘発テストです。

五十肩で腕を挙げると痛いというのと同じです。

圧痛点を検査するというのも疼痛誘発テストに入ります。これらは積極的診断です。

厳密にいうと他覚的所見ではないでしょうが、痛みの診断で他覚的所見はありませんのでこれら疼痛誘発テストを他覚的所見として記載せざるを得ません。

除外診断をして積極的診断をして、次に治療的診断をします。こうすれば痛みはどうなるのかを見るわけです。

除外診断、積極的診断、治療的診断をして、最終的に痛みの生理学にてらしあわせて他人の体験(痛み)を鑑定(診断)するわけです。

by junk_2004jp | 2009-04-26 19:04 | 痛みの生理学


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