心療整形外科

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2010年 06月 05日

痛みのエビデンス

痛みとは「experience」(体験、経験)と定義されました。1986年 国際疼痛学会において。

つまり、個人的な体験、他人のみた夢と同じことなのです。

この学問は骨大工とは最も遠い学問ともいえます。

個人的な体験は精神科医の学問です。国際疼痛学会でも精神科医が座長となって決められたとのことです。

ところが、痛みはいろいろな身体疾患に合併することから話がややこしくなっているのです。

悪性腫瘍に合併した痛み

感染症に合併した痛み

骨折や捻挫に合併した痛み

リウマチなどの炎症性疾患に合併した痛み

筋肉の微小損傷に合併した痛み

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EBM(evidence based medicine)証拠、根拠に基づいた医療

痛み疾患のエビデンスといっても、「他人の夢」の証拠なんてあるはずがありません。

つまり「痛み」は決して測ることができなく、比較することができないのです。

だから、痛み疾患の調査、研究は「アンケート調査」になってしまうのです。

このアンケート調査は永遠に厳密ではありません。

なぜかというと、「痛みの原因を説明してから」でしか治療できないからです。

たとえば

全く同じ人、Aさん、Bさんがいたとします。現実にはあり得ませんが。

Aさんは名医と称されTVでもお目にかかる教授に、大学病院の診察室で、MRIをみせられて「脊柱管狭窄症」による痛みと診断されました。

BさんはレントゲンもMRIも撮らずに私によって「筋肉の攣り」による痛みと診断されました。

どちらにしても痛み(他人の体験)の原因を診断するという行為は意地悪な表現をすれば”原因を洗脳する”ということです。洗脳は舞台装置が重要となります。そして、その洗脳に従って治療をするという複雑な行為となっているのです。

アメリカでは「痛みの診断基準」ではなくて「痛みの分類基準」というような言葉を使うようになっているらしいんです。つまり、「貴方の感じている痛みは**に分類される痛みです。」というふうに。他人の体験(experience)の原因を診断できませんよね(笑)。

Aさん、Bさんにトリガーポイントブロックを続けて行い、1カ月後にアンケート調査をしました。

トリガーポイントブロックもその方法には医師によって大きな違いがあるようです。

こういうことはアンケート調査したところで意味があると思いますか。

数名ならばいろいろなパターンを想定して比較調査は可能かと思いますが、大規模では不可能です。

痛み疾患のエビデンスは、全く痛みの原因を教えないで(つまり洗脳しないで)、治療してアンケートをとる必要があります。治療の効果も説明してはいけません。現実には不可能ですね。

治療に手技が関係する場合は、一層複雑になってきます。

痛みはいろいろな身体疾患に合併することのある、個人的体験です。

そのエビデンスを求めることは不可能でしょう。

個人の過去の体験、信念、思いこみ度合い、いろいろなファクターが影響しています。

「エビデンスが無い」というと、根拠がないことで無意味なことと早ガッテンする人がいますが、そうではないのです。

過去にそういう調査が行われていないということです。今後も永遠に正確に行うのは不可能でしょう。

そこで、

mechanism based medicine

「痛みのメカニズムに基づいた医療」というところにスタンスを置く以外にないと思うのです。

narrative based medicine (物語に基づいた医療)という言葉もあります。痛みは個人的な体験なんですから、まさに「narrative」そのものです。

bio-psycho-social medicine (生物・心理・社会的な医学)という言葉があります。痛みはまさにこれなのです。

bioに相当するのがmechanism、psycho-socialに相当するのがnarrativeと思います。

このように、非常に複雑な臨床を、患者さんと理解し合う共通言語もなく短時間に安価でたくさんの患者さんをみているのが現状です。

NKHの教育番組は痛みの医療に関してはまずいところがあります。

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by junk_2004jp | 2010-06-05 01:13 | 痛みの生理学 | Comments(0)


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