2010年 08月 14日

慢性痛はどのようにしてできるか②



男性患者:「爪が変形してきて、色が変わってきました。驚いています。」

解説者:「しかし最も驚くべきことは、きっかけは、通常、ほんの些細なことだということです。

痛みは脳によってコントロールされています。

損傷が起きた時、その瞬間に、痛みの受容器は末梢神経を介して脊髄に電気信号によるメッセージを伝達します。

脊髄の中の神経末端の結節部から、神経伝達物質が放出されて、脳の視床へとメッセージが伝達されます。

ここが、痛みが記憶されるポイントなのです。

視床は、脳の他の部分を刺激し、痛みの信号を減弱させようとして、神経にメッセージを送ります。

しかし時に、神経システムが混乱して、これらの痛みのメッセージが増幅されてしまうことがあります。

中枢神経系の過剰な刺激が慢性疼痛のきわだった特徴なのです。」

女性患者:「痛みは最初くるぶしから下の足の部分に感じられたのですが、それが脚全体に拡がってしまいました。その結果、車椅子を使わざるを得なくなってしまいました。これが今の私です。」

解説者:「そして今や激痛が彼女の全身に拡がっています。」

医師:「脳のレベルで起きていることはただ一つのことです。」

解説者:「機能MRIにより、慢性疼痛で脳の回路が変化していることが明らかになっています。

このような変化が可能になるのは、神経系の可塑性として知られています。

そして、キズが治癒された後も脳は痛みのメッセージを送り続けるのです。」


これが慢性疼痛の出来上がるメカニズムです。

もちろん慢性疼痛にも強い、弱い、部分的、広範囲などの差はありますが。

ヘルニアや脊柱管が神経を圧迫しているとか、軟骨や椎間板がすりへっているとかいう骨大工さんの理論では慢性疼痛は解決できないのがおわかりですか。

「先取り鎮痛」という言葉があります。これは全身麻酔で手術をするときでさえ、手術の創の部位に局所麻酔を打つことです。

つまり、全身麻酔で手術をしても、手術の術野で生じている外傷の痛み(手術といってもそれはまさに骨にまで達する外傷なのです)は脳に伝わっているのです。

これが術後長引く痛みの原因になっているわけです。これを防ぐために術前に創となる部位に局所麻酔をうつわけです。

Failed back surgery syndrome

Failed:失敗   back surgery:脊椎手術

脊椎手術をしたあと、痛みに悩まされている人はとても多い。

手術といっても、外傷なのです。

外傷後に生じるCRPSタイプ1といってもいいでしょう。古い言い方ならRSDです。

失敗といっても手術の技術の問題ではない。運が悪かったといしか言えないかもしれません。先取り鎮痛をしていれば違ったかもしれません。

絶対に必要な手術(悪性腫瘍、感染症、骨折、神経麻痺)なら仕方がないとは思いますが、これらでないのなら、手術の意味がわかりません。

意味の分からない手術のあと、CRPSが生じれば、踏んだり蹴ったりです。痛みのメカニズムを十分に勉強して、危険な治療から身を守るべきです。

手術のほかにもCRPSを生じるものとして、乱暴な手技矯正があります。

慢性疼痛を証明する科学的手段はfunctional MRI;fMRI(機能的MRI)です。

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by junk_2004jp | 2010-08-14 08:05 | 痛みの生理学 | Comments(0)


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