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心療整形外科

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2004年 12月 21日

認知療法

認知の歪み

うつ病者の考え方の特徴として「自分は生きる価値のないどうしようもない人間だ」「この世の中にいいことなんてない」「このさき何の望みもない」といった具合に自己、自分を取り巻く世界、未来の三方面に対する否定的な視点が中心にあり、「否定的認知の三徴」と呼ばれている。

1976年にアーロン・T・ベックはうつ病者独特の認知の歪みとして

①全か無かの思考
②破局的な見方(ちょっとした困難を大変な災難のようにおおげさに考える)
③過度の一般化(たった一度のいやな出来事から、それが何度も繰り返しおこるだろうと勝手に結論すること)
④選択的抽出(自分の抑うつ的概念を正当化し支持するようなたった数個の論拠を選択的に選び出し、そのほかの情報をすべて無視すること。
⑤ポジティブな側面の否認(たとえば合格しても「運が良かっただけ」と考えるような、よい出来事も悪い出来事にすり変わってしまうこと)
⑥独断的推論(読心術;他人は私の心を読んで私が何をして欲しいか知っているべきだという考え方。否定的予測;何か悪いことがおこりそうだと想像して、それが現実的でなくてもその予測を事実だと考える場合)
⑦誇大視と極微視(自分の失敗や欠点、他人の才能をみるときに実際より大きく見積もること)
⑧感情論的論法(「罪悪感を感じるから、自分は悪い人間に違いない」など「我感じる,、故に、我あり」的な論理)
⑨「すべし」表現
⑩レッテル貼りと誤ったレッテル貼り(自分の誤りや不完全さを理由に、まるでそれが自分そのものであるかのように否定的な自己像を作り出すこと)
⑪自已関係付け(自分とは何の関係もない出来事を自分にとって意味があると考えること)

をあげている。

このような考え方や認知の歪みは自動思考とスキーマによって規定されているという。自動思考とはある状況において自然に沸き上がってくる思考やイメージ、スキーマとは生まれつきの要因と生まれ育った環境的な要因の影響を受けながら得られてきた個人的確信・信念、その人の独自のものの見方のことである。

認知療法は問題をすべて解決することは目標としておらず、

①歪んだ認知を確認し、それが正しいかどうかを検討する
②ゆがんだ認知のかわりに柔軟性のあるスキーマをつくる
③新しい認知反応および行動様式を身につける

という3つを目標とする。

うつ病診療ハンドブック(メディカルレビュー社)


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慢性疼痛の患者さんもこれと似た認知の歪みがあることもあります。痛みのため、しだいに考え方がマイナス思考になり、それがますます痛みの持続につながるという悪循環を形成しています。

by junk_2004jp | 2004-12-21 13:19 | うつ・不安・ストレス


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