心療整形外科

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2004年 12月 22日

ある先生からのご質問

加茂先生

はじめまして。**の**病院に勤務するAと申します。突然のメールをお許しください。先生のホームページを拝見しました。非常にすばらしい内容でありいろいろと考えさせられました。

私はX年目の医者ですが、・・・・・・・・・・・・・今働いている病院は年間手術件数が整形だけで?00件ある比較的大きい病院で、・・・・・・・・・・のもとで手術や検査に明け暮れる毎日です。・・・・・・・・・・・・・・手術に偏った治療方針にいささか疑問を感じておりました。

ホームページを見ていていくつか疑問におもったことがありましたので、お聞きしてもよろしいでしょうか?腰痛に関してはまさに先生のおっしゃる通りで従来のアプローチでは解決できないと思うのですが、神経根症に関してはいかがでしょうか?

当院には腰下肢痛や頚髄症などの患者さんがたくさん紹介されてきますが、丁寧に問診と神経学的所見を取って右のL4神経根症だな、などと診断を付けてから検査を行うと7割くらいの患者さんで予想通りの画像所見が得られます。無症候性の椎間板膨隆は確かにおおいですが、椎間の高位と左右を考えるとやはり偶然神経症状と画像所見が一致したとは考えにくく、物理的圧迫が痛みの発症になんらかの関与をしていると考えるのが適当ではないかと思いました。

しかし、画像上異常がなくても神経根症を呈する人はいますし、手術で圧迫を除いてもよくならない人も確かにいますので、先生のホームページを読んだ上で考えると圧迫は痛みの原因そのものではないが、圧迫があるとたとえば血流の障害などで痛みを起こす確率が増えるのではないのかと考えましたがいかがでしょうか?

それからもう一つ、加茂先生の様なアプローチで患者さんの治療にあたるにはまず、何から勉強したらいいでしょうか?もし、お返事など頂ければ幸いです。

****病院整形外科  A


A先生が疑問に思われるのはごもっともなことです。私も神経根症状はずっと信じていました。後縦靱帯骨化症などによる脊髄症状はたしかに存在しますが根症状とはいったい何なのかということです。

根症状とは痛みなのか神経脱落症状なのか?神経脱落症状と判断したならば速やかに圧迫をとり除くべきでしょう。筋電図の検査は欠かせないと思います。しかし、絞扼性神経障害としてヘルニアをあつかっている学者はいないのではないかと思います。

実際、私はヘルニアで身体障害者になった人を見たり聞いたりしたことがありません。私は一般的にヘルニアと言われているものは神経脱落症状ではないと思っています。(もちろん極めて希に神経脱落症状を呈するヘルニアがあるかもしれませんが・・・何事も絶対という表現はできません)

患者さんには、圧痛点が下肢にも臀部にも腰にも多数存在します。「坐骨神経に沿って圧痛点がみられる」というように記載されています。これもおかしいと思いませんか。障害を受けた神経の走行に圧痛点があるというような生理学的な根拠は聞きません。

「この痛みは根由来」という表現もしますが、50肩の肩周囲~上腕にみられる圧痛点とどう違うというのでしょうか?医者がかってに空想してるだけではないでしょうか。もし根由来の痛み(関連痛)ならば、下肢に湿布を貼ったり、低周波をかけたりしても効きませんが、実際にはそのような治療が行われ、ある程度の効果があると思います。関連痛に圧痛点があるのも不思議ではないでしょうか。

A先生の経験では7割ぐらいが神経学的検査とヘルニアの高位が一致するとのこと、またヘルニアがないのに根症状?を呈する人がいるとのことです。一致するのは説明しやすいでしょうが、一致しないものはどう説明すればよいでしょうか。一致してもしなくても同じように説明できれば医者としては気楽ですね。

患者さんの愁訴は痛みなので、神経脱落症状ではありません。神経学的検査がどういう意味をもつのでしょうか。たとえば50肩の患者さんに神経学的検査をする意味は?ということです。

圧迫による神経の阻血が痛みをつくるという説も生理学的にも理解できません。この説は脊柱管狭窄症のときによく使われます。痛みは末梢から中枢へ伝わります。末梢になにごともないのに痛みが起こるとはどう考えたらいいのでしょうか。

近年、「慢性疼痛」という概念が精神医学会やペインクリニックのほうから盛んに言われるようになりました。その治療は社会・心理学的アプローチというのが一般的なことになっています。それとの整合性をどう図るのかということも考えてみてください。

ヘルニアと痛みのかかわりに疑問を持たない整形外科医はいないでしょう。整形外科でヘルニアと診断されて民間療法へ流れる患者さんもかなりいることと思われます。民間療法のポイントも研究されたらいいでしょう。

私は、痛みの本態はmyalgia(筋痛症)だと思っています。だから、何をしていても麻痺を残さずいずれ治ってしまうのです。だから民間療法が手を出せるのです。整形外科医はヘルニアにこだわるが民間治療家はヘルニアにこだわらない、だから結果的に民間治療家のほうがうまく行くケースもあろうかと思います。

根症状といわれている下肢痛も関連痛(放散痛)ではなくてそこに実在するmyalgiaだと確信しています。

myalriaとヘルニアの因果関係は学問的には興味がありますが、臨床的には興味がありません。つまり構造と痛みの関係は痛みの生理学では証明されていません。

硬膜外ブロック(仙骨ブロック)、神経根ブロックは局所麻酔を利用して、痛みをリセットさせようとする治療ですね。これも考えてみれば、痛みの原因が機能的なことだから効果が期待できるのです。全身麻酔、筋弛緩剤でもかなりの割合でリセットされると思いませんか。

ラセーグテストも神経根が牽引されて放散痛がおきるなんてインチキくさいですね。痛みの生理学では×でしょう。50肩の腕を挙げると痛いのとどう違うというのでしょうか。このようにインチキくさいこともだれも疑問にしませんね。

疑問はいっぱいあります。患者さんを心身から診ることによって分かってくることがあると思います。

神経根症といわれている症状の本態はmyalgiaだと思っています。麻痺症状は私は診ていません。myalgiaでなければいったい何なんでしょうか。その部の圧痛と腰部の圧痛はどう違うのでしょうか。ヘルニアの高位とmyalgiaの部位が高率に一致するとすればその理由は何なのでしょうか。私にはわかりません。
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by junk_2004jp | 2004-12-22 12:39 | ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾 | Comments(0)


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