心療整形外科

junk2004.exblog.jp
ブログトップ
2011年 02月 17日

筋筋膜性疼痛症候群

「慢性疼痛における薬剤選定と治療薬開発」

*1部3章6節 判明している筋筋膜性疼痛症候群と今後の展望

この節は私が執筆しました。出版社の了解がありましたのでここに掲載します。

_______________________



筋筋膜性疼痛症候Myofascial Pain Syndrome(MPS)は、1983年にDr.Janet G. TravellとDr.David G.Simonsによる著書
『Travell & Simons’ Myofascial Pain and Dysfunction: The
Trigger Point Manual (筋筋膜性疼痛と機能障害: トリガーポイントマニュアル)』で紹介された。

アメリカでは Chronic Myofascial Pain (CMP)と病名を変更する動きもある。Chronic Widespread Pain からFibromyalgia(線維筋痛症)へと慢性化とともに痛みの範囲が広がっていくことがある。

緊張型頭痛、顎関節症、頚椎症、むちうち症、寝違え、肩関節周囲炎、上腕骨外側上顆炎、腱鞘炎、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、ぎっくり腰、変形性関節症、半月板障害、シンスプリント、手根管症候群の一部、捻挫・打撲の後遺症、踵骨棘などの痛みやしびれは、実際はMPSによるとものと思われる。

炎症性疾患である関節リウマチ、麻痺性疾患である頚部脊髄症にもMPSは合併するので、これらの元疾患の症状とは分けて考える必要がある。また身体表現性障害といわれているもののなかにもMPSが含まれている可能性がある。

MPSは筋骨格系の痛みの最も一般的なものであるにもかかわらず、通常の西洋医学で行われる血液検査や画像診断で異常所見がないために存在そのものが医学界はもとより患者の間にも十分に認知されていない。そのために無駄な検査や治療が行われ結果的に慢性痛になるケースが少なくないと思われる。また狭心症などの内臓疾患や神経根障害と誤診されるケースもある。

MPSの発生と持続

筋肉に微小損傷が発生すると筋小包体が障害され、カルシウムイオンが放出される。その結果、ミオシンフィラメントの間にアクチンフィラメントが滑り込む。こうして筋線維が短縮する。

このとき活動電位が出ないので、収縮と呼ばず拘縮という。拘縮が発生すると、血流が障害される。

これに筋spasmの継続によるエネルギー消費の増大が加わって代謝産物が蓄積し、ブラジキニンが産出されて痛みを生じる。

また、プロスタグランジンも産出され、ブラジキニンの発痛作用を増加する。また反射性筋収縮や血管収縮が加わって痛みを強め、痛みの悪循環ができ上がる。

その部位のポリモーダル侵害受容器は感作されて末梢性の痛覚過敏状態となる。この侵害受容器の感作がMPSの発症に大きくかかわっている。

滑り込んだフィラメントが元に戻るのにATPのエネルギーを必要とする。血流が悪いとATPの産生が減ってなかなか拘縮が解けない
(Energy Crisis)。そのためしこりが残り、慢性化するとMPSとなる。

筋肉にできたしこりは長期間にわたって人を苦しめることがある。

このしこりを索状硬結または筋硬結という。筋硬結を押すと飛び上がるほど痛いのでジャンプサインという。

筋硬結を圧迫すると、遠くに痛みを放散する箇所がある。これをトリガーポイント(TrP)といい、放散する痛みを関連痛という。

随伴TrPは主要TrPと同じ筋肉内や関連痛パターンが現れる筋肉内に作られる。付属TrPは主要TrPのある筋肉の骨付着部にできるもので、主要TrPが消失しないかぎり消失しない。

防御姿勢を取らない転倒や事故、繰り返される長時間の労働や運動、習慣となった不良姿勢、長期間の心理的緊張、伸張性収縮などのときに筋肉の微小損傷が発生する可能性がある。十分な休息がとれない、寒冷にさらされる、ビタミンやミネラル不足、ストレスなどは回復の妨げになる。

骨盤の左右不均衡、脚長差は変形性股関節症にみられるが、これらもMPSの原因になる。

MPSの診断

1990年にDr.David G. Simonsが発表した筋筋膜性疼痛症候群の診断基準の日本語要約は以下の通り。

必須基準

1.触診可能な筋肉の場合、そこに触診可能な索状硬結があること。
2.索状硬結に鋭い痛みを感じる圧痛点(部位)があること
3.圧痛点を押した時に、患者が周辺部分を含む現在の痛みは圧痛点から来ていると感じること。
4.痛みにより体の可動範囲に制限があること

確認すべき観察事項

1.目視可能または、触診でわかる局所的な単収縮(筋肉の収縮)が所見できるか?
2.針を圧痛点に刺すことにより、局所的な単収縮が所見できるか?
3.圧痛点を圧迫することにより、周辺筋肉で痛みや痛みでは無いが何らかの感覚を感じるか?
4.索状硬結の圧痛点における自然状態での電気活動を観測するために、筋電図を取得、観察する。

MPSの症状

MPSの症状は、痛み、しびれ、むくみ、冷感、こわばり、めまい、耳鳴り、頭痛、運動障害、知覚鈍麻、腱反射低下などで慢性化すると睡眠障害、不安、抑うつ、疲労感、頻尿、便秘・下痢などさまざまな自律神経症状に悩まされる。

小臀筋のTrPは下肢に強い痛みを放散し、斜角筋のTrPは上肢に痛みを放散する。胸鎖乳突筋のTrPはふらつきや耳鳴り、頭痛など多彩な症状を呈す。

筋短縮の結果、丸まった肩、ストレートネック、O脚変形、外反母趾変形、骨棘形成、椎間板や軟骨の変性、椎間板ヘルニアなどの構造異常をきたす一因となるものと思われる。

MPSの治療

局所麻酔を用いたTrPブロック、鍼、指圧、マッサージなどで筋硬結の血流を回復して筋肉をほぐすこと。その後、ストレッチで筋肉を自然長にもどす。

短縮した筋肉を無理やりストレッチするとさらに筋肉の微小損傷をきたすおそれがある。また、筋肉を鍛えることは逆効果になるかもしれない。

[PR]

by junk_2004jp | 2011-02-17 20:52 | MPS | Comments(3)
Commented by わた at 2011-02-18 09:18 x
とってもわかりやすい!スッキリです
Commented by junk_2004jp at 2011-02-18 19:03
ありがとうございます。
Commented by 福山 at 2012-05-23 01:16 x
四年前に追突されてて、痛み、痺れ、重い症状あるのに、レントゲン、MRI検査しても異常はないと言われ続け、どうしても自分で納得行かず、症状とかレントゲン、MRIで写らない病名を調べてたら、筋肉性腰痛症・筋筋膜性疼痛にヒットしました。 病名が解れば、ちゃんとした治療出来る可能性があるので近い内にペインクリニックの先生に相談に行って治療をして貰おうと思っています。
みなさん、自分の病名が検査をしても解らない時はネットに症状とかいろいろ入れて検索してみると良いですよ。 試してみて下さい。 *そこらの医者より賢くなりますよ*


<< 骨屋から肉屋になります (掲示...      わかさ2011年4月号 >>