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心療整形外科

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2011年 04月 24日

ヘルニア狂時代

●小学生が椎間板ヘルニアで手術の必要があると言われているので診てやってほしいと知人が紹介してくださった。

小学生が腰が長い間痛い・・・何かしらストレスがあるのだろうと想像される。たいていはそういうことのサインなんだ。お母様から話を聞くと、最近、学校が面白くないといっているとのこと。

学校生活になにか問題が生じているのだろうから、学校の先生とよく相談をして、愛情深く接してあげるようにアドバイスした。

今は元気になったとのこと。

●中学生が2カ月前、雪かきをした次の日より腰痛。検査の結果、椎間板ヘルニアとのこと。安静にしているが一向によくならない。座位がつらい。

部活(体育系)の先生が当院を受診するようにとアドバイス。

脊柱起立筋が強く張っていて、圧痛があった。TPB後、すぐに痛みは軽減した。

●関西地方、40歳代、男性。1カ月前より、腰、右下肢の激痛で歩行がままならない。椎間板ヘルニアと診断されている。

職場の上司がわたしのところを受診するようにとアドバイス。TPB後、痛みは軽減。とんぼ返りされた。上司の方を私は存じ上げていない。

●70歳代、女性、1カ月前、ちょっとしたことで脇腹が痛くなり受診。TPBで改善した。話を聞くと・・・

数年前、脊柱管狭窄症と診断されて手術をしようとなったが思いとどまったとのこと。

脊柱管狭窄症の手術をした友人をお見舞いにいった。友人はとてもよくなって喜んでいた。あなたも診てもらいなさいよ、とのアドバイスで診察をうけた。その結果、脊柱管狭窄症とのことで手術が必要といわれた。手術をしてもらおうと思った。

ある日、待合室で、知らない人に・・・

「手術をしても最初は少しいいけど、歩き始めるとまたもとのように痛くなる。ここで手術した人はみんな、そうなんだ。」

という話を聞かされた。それで手術はしないことにした。現在は特に辛い症状はない。

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腰や下肢が痛い患者さんはいっぱいいるが、レントゲンやMRIで検査して、ヘルニアや脊柱管狭窄があれば、それが原因だというし、なければ、「異常なし」。

ほとんど、放置で、よくならなかったら手術。手術してもよくなるとはかぎらない。

もうそろそろ、素人さんにも見透かされているのではないか。

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄が痛みやしびれの原因になることはない。

構造の治療と痛みの治療は別問題なのだ。

椎間板ヘルニアは椎体の圧迫骨折と同じと考えてよい。

椎間板ヘルニアも椎体の圧迫骨折も二通りの成り方がある。

①慢性的な外力で徐々に、いつのまにか。この場合は自覚する痛み(筋痛)はあってもなくてもいいだろう。

②大きな外力が加わりいっきに生じる。

椎体が骨粗鬆症で弱ければ圧迫骨折が生じるだろう。椎体が頑丈なら、圧迫骨折が生じる代りに椎間板にダメージが加わる。髄核が飛び出るかもしれないし、飛び出ないかもしれない。

椎間板ヘルニアや圧迫骨折の治療は新鮮なものが治療の対象となる。

治療は構造の治療と痛みの治療は別問題だ。構造を治すと痛みも治るというものではない。痛みを治すと構造も治るものでもない。

痛みの治療は同時に生じている筋痛の治療なのだ。

飛び出ているものを取ったところで何の解決にもならない。

理想をいえば、飛び出たものを引っ込めてまた新しい椎間板のすることだが、それはできない。アンチ・エイジングは理想なのだが。

顔にしわがいくのと同じく椎間板も老化する。しかし、それが痛みの原因だとするのは間違っている。

重大な骨折や腱、靭帯の断裂や明らかな左右の不揃いなどを除いて多くの場合、構造の治療はほとんど意味がない。

それに反して、痛みの治療はとても重要だ。

痛みは慢性化するし、どんどん拡大することもある。不安や抑うつ状態も引き起こす。

人生に多大な影響を及ぼすものなのだ。


by junk_2004jp | 2011-04-24 09:00 | ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾


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