2005年 02月 01日

プラセボ効果

〔サンフランシスコ〕 当地で開かれた米国整形外科医学会(AAOS)の年次集会で,ベイラー大学医療センター(テキサス州ヒューストン)整形外科のBruce Moseley教授は,変形性膝関節症(膝OA)の患者に関節鏡下デブリドマンや関節内洗浄を行っても,2 年後の予後はプラセボと差がないとする研究結果を発表した。

同研究では膝関節痛がある患者180例に、関節鏡下デブリドマン、関節鏡下膝関節内洗浄、器械挿入または軟骨切除をしない模擬関節鏡下小切開手術が行われた。3群に無作為に割り付けられた被験者は全員がインフォームドコンセントに署名し、同じ外科医の手術を受けた。

同意の手続きで擬似(sham)手術のみを受ける可能性があることを実際に説明した結果、研究参加基準に合致した被験者324例のうち、44%は参加を断った。研究期間中は一貫してどの手術を受けるか被験者にわからないようにした。

2年間の追跡期間で、3群全てで疼痛および膝関節機能の中等度の改善を報告したが、デブリドマン群も関節内洗浄群も、プラセボ群より成績が良いわけではなかった。追跡期間のある時期において、擬似手術を受けた患者の転帰はデブリドマン群より良好であったと報告された。

関節鏡下膝関節手術によりほとんどの患者の疼痛が軽減することが過去の臨床試験で明らかにされたが、実際の手術と擬似手術の比較はされていない。米国では、年間65万例以上の関節鏡下のデブリドマンや洗浄処置が行われているが、その多くは関節症患者で、費用は1回約5千ドルである。

「本研究は、手術方針に重要な関わりを持つ」と同博士は話す。「膨大な利益をもたらす産業を後押しする推進力が全てプラセボ効果であることが判った。医療産業は、純粋に主観症状を軽減する外科処置のプラセボと比較した有効性をテストする方法を考え直す必要がある」


これは我が業界ではかなり有名な話です。手術をする医師以外は手術室の看護師にももちろん疑似手術だということを知らせていません。器械を操作する音なども疑似手術を見破られないように注意しています。結果を調べる医師も疑似手術をしたことを知らせていません。

このような厳重な方法で調べたということです。このような実験は日本では無理でしょう。

このたび脊椎固定術もこのような実験が行われる可能性があるということです。

http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_364.htm

倫理的問題は?

“倫理上の理由により、偽手術については依然として異論があるが、我々は、この手術法[すなわち脊椎固定術]について偽手術を取り入れた無作為研究が正当化されると考えている。なぜなら、生命を脅かす疾患のために行う手術ではなく、主要な臨床アウトカムは主観的であり、合併症の発生率が高いからである”と博士らは述べている。

早い話が命には関係ないし、そんなに成績もいいわけではないからなんです。結果が楽しみですね。でも、固定術で金属をつかったら、レントゲンはどうするのでしょうか。合成写真にするのでしょうか?^^。

理論的にも結果は明らかです。プラセボ効果しかないでしょう。痛みというのは個人的な経験ですから、形とは無関係です。
「あなたの脊椎には大きな金○片とネ○がささっています。これでよく痛くないですね。動きに気をつけなさい。」なんて呪いをかけられた日には、たまったものではないですね。痛みとはそういうものですよ。
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by junk_2004jp | 2005-02-01 15:48 | 慢性痛 | Comments(5)
Commented by 首領 at 2005-02-02 21:58 x
外傷で関節鏡手術受けた事ありますけど、擬似手術かも知れないと説明を受けながら、56%の人が受諾しているんですね。すごい。
それは置いておいて、「正規の手術を受けた」と思っている人と「擬似手術だったのかも」と思っている人の改善の度合いもちがうのかなぁ~と思いました。
Commented by junk_2004jp at 2005-02-03 01:00
そういう統計もおもしろいですね。
Commented by りん at 2005-02-06 00:33 x
そもそも、このような疑似手術の可能性もある治療に同意する「患者」方には、あまり症状に困っていないというバイアスがかかっていると思うのですが???それと2年後というのは、どうしてでしょう?えらく中途半端な気がします。2年経つと効果がなくなるという風にもとれますね。
脊椎固定術に対しては創外固定を用いた実験を聞いたことがあります。椎弓根に創外固定をかけ、患者にはわからぬよう創外固定を「固定」したり「緩めたり」してその痛みの変化を見るものです。
痛みを個人的な経験と決めつけ形と無関係とまで断言するのであればこういうBLOGでちまちま言わずにきちんとした学会で意見を述べたらよいのでは??これじゃ民間療法と同次元ですよ。
手術で痛みや痺れの症状が改善したのを見たことがないのかもしれませんが。もちろん、基本的に椎間板ヘルニアは保存的加療で直るという意見に関しては同意見です。ただしこの理由で放置され麻痺を来してしまった例も数例見ています。
何事も決めつけは良くないと思うのです。腰痛の中に心理的な腰痛が多いという意見には同感です。特に交通事故がらみは。


Commented by junk_2004jp at 2005-02-06 04:56


>痛みを個人的な経験と決めつけ形と無関係とまで断言するのであればこういうBLOGでちまちま言わずにきちんとした学会で意見を述べたらよいのでは??これじゃ民間療法と同次元ですよ。

痛みの定義が下記のようになっています。私が決めつけているのではありません。

[痛みの定義] 国際疼痛学会   1986年

An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage.

>ただしこの理由で放置され麻痺を来してしまった例も数例見ています。

麻痺は別ですね。麻痺症状があるのなら速やかに圧迫を除去すべきです。ヘルニアによって坐骨神経麻痺をきたしたという症例に私は出会っていません。よろしかったら詳しく教えてください。

Commented by junk_2004jp at 2005-02-06 05:06
>そもそも、このような疑似手術の可能性もある治療に同意する「患者」方には、あまり症状に困っていないというバイアスがかかっていると思うのですが???

私の経験では心因的要素の強い人の方が強い痛みを訴えるようです。

>手術で痛みや痺れの症状が改善したのを見たことがないのかもしれませんが。

見たことがありますよ。

>何事も決めつけは良くないと思うのです。腰痛の中に心理的な腰痛が多いという意見には同感です。特に交通事故がらみは。

悪性腫瘍、感染症、骨折などの特異的腰痛はもちろん除外しての話ですよ。


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