2012年 11月 21日
私が医師になった昔は「慢性痛」という概念はなかった。 最近「慢性痛」という概念がさかんにいわれるようになった。 痛みの電気信号が脳に入力することが続くと中枢性感作が生じる。 中枢性の痛覚過敏だ。 ワインドアップ現象、長期増強といったことが起きる。(検索してみて) これは対応可能な急性痛から対応困難な慢性痛に移行することだ。 慢性痛にならないようにするには早く痛みを止めることだ。 昨日MRが「慢性痛の薬物療法」という小冊子をもってきてくれた。 内容は、抗うつ薬、抗てんかん薬、ガバペン、プレガバリン、オピオイドが書かれていた。 著者は脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの神経根性痛を認めている有名な整形外科医だ。 これはちょっとおかしくないか。矛盾している。 脊柱管狭窄が痛みの原因ならば、一刻も早く解放しなければ慢性痛になる。 ヘルニアが痛みの原因ならば、一刻早く除去しなければ慢性痛になる。 しかし、そのような説明は聞かない。 手術をして慢性痛になった人をたくさんみてきた。 その医師は「慢性痛」という最近はやりの概念をプレゼンテーションすることはできないことだろう。 病名のブームは製薬会社がもたらすように思われる。 骨粗鬆症・・・・・・ビスホスホネート製剤 うつ病・・・・・・・・・・SSRI,SNRI 高脂血症・・・・・・・・スタチン系製剤 脊柱管狭窄症・・・・プロスタグランジン製剤 次々と新しい薬剤がでてくることはいいことだ。 製薬会社はその道の第一人者といわれている有名医師にいろいろと解説をかいてもらったり、講演してもらうわけだ。 開業医はそこから情報をえていることが多いのではないか。 このようにして病気のブームがつくられる。 そういうことで最近は「慢性痛」というわけ。 トラムセットやノルスパンテープ リリカは神経障害性疼痛という適応なのだが、これはどうでも取れる。実質的には慢性痛の薬剤だ。 脊柱管狭窄症やヘルニアが痛みの原因になるといっている人が慢性痛を論じるということに違和感をかんじないか。 言葉は印刷物として残る。こわいことだ。 慢性痛のほとんどは筋痛症なのだ。(chronic myofascial pain) 痛みの生理学者はこのようにいっている。 筋痛症という最もありふれているが、医師がしらない病気がブームになることは当分ない。
by junk_2004jp
| 2012-11-21 00:51
| 慢性痛
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