2015年 09月 27日

診断が転々とした症例

メールで相談を受けた症例です。(患者さんは外科系の専門医)

1年半前に右下腿外側に疼痛。大きな整形外科病院で「コンパートメント症候群」と診断されたが治療なし。

痛み増強しMRIで「脊柱管狭窄症」、前屈運動と硬膜外ブロック5回、改善せず。

疼痛悪化、再度MRI、「椎間板ヘルニア」、歩行困難。

手術、痛み消失するも2ヶ月後に再発。

当院のHPをみる。


もし1年半前に当院を受診していたとすれば、私は右下腿のMPSと診断します。小臀筋のMPSで下腿への放散痛かもしれませんが、診察すればわかります。

レントゲンは撮りません。

右下腿に圧痛点を探し、その部位に局所麻酔を注射します。そして痛みがなくなったことを確認します。

痛みが生じたエピソードをさぐります。旅行、階段、畑仕事など。

多分、1〜数回の治療でよくなるでしょう。痛みは慢性化する前はわりと簡単によくなるものです。

患者さんは医師ですので、医師の知り合いも多く、トリガーポイントを頼んでも「教科書に書いてないことはできない」といわれ困っているとのことです。

このように医師は筋痛という概念を習わないのです。

最も普遍的な疼痛である「筋痛」を知らないのです。

このことによって患者さんが被る不利益は大変なものです。

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が痛みの原因になることは決してありません。その痛みは筋痛なのです。

痛みの生理学者の著書を3つ紹介します。

臨床医のための痛みのメカニズム  横田敏勝 著

痛覚神経の生理的興奮は、その末梢の自由終末にある痛覚受容器(侵害受容器)が刺激されたときにみられる。自由終末と脊髄を継ぐ部分からインパルスが発生することはめったにない。痛覚受容器を介さず神経繊維からインパルスが発生することを異所性興奮という。異所性興奮を生じる可能性が高いのは、脱髄部および障害された末梢神経の側芽と神経腫である。

脊 髄後根を圧迫すると神経根痛(radicular pain)がでて、圧迫された後根の支配領域に痛みが走るとみられている。しかし、この考えは特別な場合にしか通用しない。たとえば、脱髄線維を含む脊髄 後根への機械刺激を誘発するが、正常な脊髄神経根の圧迫は痛みを生じない。

実験動物の正常な脊髄後根を圧迫しても、痛みを伝える侵害受容線維を含めた求心性線維の持続的発射活動は誘発されない。


「痛みを知る」熊澤孝朗 著

神経線維は通常、その末端にある受容器から信号を伝えるものであって、その途中が興奮を起こしたりするようなことはありません。



[疼痛学序説  痛みの意味を考える   Patrick Wall著 横田敏勝訳]

Patrick Wallはゲート・コントロールセオリーで著名な生理学者

この割合(椎間板ヘルニアの手術)は現在下がり続けていて、神話がばらまかれて、少数の人の利益になるが多くの人の不利益になるような不名誉な時代は終わった。不利益をうけたある人たちは、手術の結果、明らかにいっそう悪くなった。

椎間板ヘルニアの手術は70年以上もの間行なわれてきた。もてはやされたこともあったが、疑問が増し続けている。ヘルニアの突出と痛みはそれぞれ独立していて、痛みの発現におけるヘルニアの突出の役割ははっきりしない。

以前この手術を熱烈に支持していたマイアミ大学 は、今ではこの手術をやめて、厳密なリハビリテーションのプログラムを採用している。
 


私の患者さんで、下腿痛→コンパートメント症候群という診断で下腿の手術→その後、脊柱管狭窄症で2回手術→よくならず

この患者さんは当院の治療で海外旅行ができるまで改善して喜ばれている。

最初から下腿のMPSとして治療すればいいものを。



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by junk_2004jp | 2015-09-27 01:07 | ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾 | Comments(0)


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