心療整形外科

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2005年 04月 14日

再びプラセボについて

変形性膝関節症への関節鏡下デブリドマンはプラセボ効果しかない

〔サンフランシスコ〕当地で開かれた米国整形外科医学会(AAOS)の年次集会で、ベイラー大学医療センター(テキサス州ヒューストン)整形外科のBruce Moseley教授は、変形性膝関節症(膝OA)の患者に関節鏡下デブリドマンや関節内洗浄を行っても、2年後の予後はプラセボと差がないとする研究結果を発表した。

”プラセボ効果は大きい'”

復員軍人局医療センター(テキサス州ヒューストン)でも手術を行っているMoseley教授は「今回の結果はプラセボ効果の驚異的なカを示していると同時に、疑わしい手術的治療を行うよりも、別なところに費用を投じるべきであることを示唆している」と述べた。

今回の研究では膝OA患者180例を60例ずつ3群に分け、第1群には関節鏡下デブリドマン、第2群には関節内洗浄、第3群には見せかけだけの処置(つまり患者を鎮静状態にして皮膚を切開・縫合し、皮下の組織には全く手を加えない)を行った。また,患者を膝OAの重症度により軽度、中程度、重度の3群に分け、各治療法における重症度別被験者が同数になるようにした。

全症例への処置は同教授が行い、手術室のスタッフも毎回同じメンバーとしたが、その後のフォローアップ検査は、各患者がどのような処置を受けたかは知らされていない医師が担当した。患者の評価は処置から2週間後、6週間後、3か月後、6か月後、12か月後、18か月後、24か月後に行った。2年間にわたるフォローを完遂できた患者は全体の92%(180例中165例)で、試験終了時の最終的な評価は108項目に及んだ。

同教授は「実質的に、どの時点のどの項目も3群で差がなかった。唯一の違いは、プラセボ群では処置2週間後の痛みが少なかったことくらいだ」と述べた。

納得できないと主張する整形外科医に対し、同教授は「2週間後以降はどの時点でも3群の間に統計学的有意差は認められなかった。そのうえ、3群とも処置前に比べて痛みは有意に軽減していた」と答え、さらに「あなたは驚いているようだが、私だって驚いている」とコメントした。

発表によると、一定距離を歩ける、もしくは所定の階段を休まずに上れるようになるまでにかかった時間にも差はなかった。3群とも患者は自分が受けた処置に満足していたが、いずれの群においても2年後には満足度は多少低下していた。

今回の調査結果は術前の病態生理学や患者が服用していた薬剤などによる影響はなんら受けておらず、心理学的因子(特に処置に対する患者の期待度)が予後を推測する最良の因子となった。

医師への信頼が何よりの治療

Moseley教授は「今回の結果は、膝OAに対して関節鏡を施行することの利点はプラセボ効果によるものにすぎないことを示している。整形外科医は,患者が術後に『症状が改善した』と言えばそれは自分たちの専門技術や練度のたまものだと思いがちである。しかし今回の結果は、患者が医師の腕前を信頼することが大きな影響を及ぼすこと、そしてこの信頼するという心理こそ、われわれが提供できるどのような治療法よりも予後を左右すること示している」と主張した。

この考えが正しければ,「このような膝OA患者にプラセボを行わず、関節鏡治療を行うのはどのような場合か」という疑問が生じるが、同教授はこの点に関しては議論が必要であることを認めつつ、「整形外科医は、より効果的な治療法を見つけることに精カを費やすべきだ」と述べた。

2001年5月10日 Medical Tribune


痛みとはそういうものなのです。これは何も膝の手術だけにかぎりません。あらゆる痛みの治療はプラセボ効果を抜きにはかたれません。治療者への信頼が何よりの治療なのです。

プラセボがいけないというのではありません。安全で費用のかからないプラセボがいいですね。痛みの治療はいずれにしろ儀式的な要素が強いものです。

専門医の資格もプラセボ効果をあげる小道具の一つでしょうか。(専門医を維持するには5年間で50単位必用です。)
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by junk_2004jp | 2005-04-14 02:46 | 慢性痛 | Comments(4)
Commented by sansetu at 2005-04-14 10:33
プラセボ群の人たちにも切開は行っていますよね。この場合、手術の方法論と目的との関係性は否定できても、両群にメスで皮膚、結合組織、筋組織に介入していますから、その生理的な影響が研究されればもっとよいなと思います。鍼灸師の立場からこのプラセボ処置を考えた場合、この擬似手術は、皮膚、結合組織、筋組織に介入する鍼治療の一種とも考えられます。すべてプラセボであってもまったくかまわないのですが、この点をクリアしないと不十分だと思います。
組織にメスを入れることそのものが、自律神経免疫療法の福田医師らが行っている「刺絡療法」に通じるものがあるようにも思います。
組織への介入→知覚受容器→自律神経→脳→血行・免疫力調整、というルートがあるならば、プラセボだけでは本質は語れないと思います。
Commented by junk_2004jp at 2005-04-14 10:45
デブリドマン(切除)してもしなくても同じ結果だということだろう。
Commented by aoi at 2005-04-15 13:20 x
関節鏡の目的には軟骨や靱帯、半月板などの評価というものもあるし一概に否定はできないのでは?

だったらXPも不要ってことになりそうな気もします。
2年後の評価のようですが、ブロック注射では2年後に劇的に改善しているのでしょうか?
「治療者への信頼が何よりの治療なのです。」
この意見に大賛成です。結局はこれだと思います。
Commented by junk_2004jp at 2005-04-15 15:04
http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_62.htm

無症状膝のMRIにおける異常所見の発生頻度

半月板の術後痛みが取れない人をしばしばみます。

関節軟骨の変性と痛みも相関関係はないように思っています。

XPは除外診断の意味しかないのでしょう。


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