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心療整形外科

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2005年 08月 27日

筋筋膜性疼痛症候群(MPS)

筋筋膜痛症候群という病気は、まだすべて原因が解明されたわけではありませんが、外傷や筋肉炎などのあとで、慢性の深部の痛みと、そこから関連痛として考えうる痛みが続くものをいいます。シモンズが診断基準(表2)をあげており、私どもも原因不明とされていた慢性痛の中に、数多くこの症候群を認めています。治療は原因筋を同定することから始めます。つまり、丹念に痛みを訴えている部分の筋肉を触診し、硬さや圧痛点の有無を調べるのです。原因筋には必ず索状に硬くなった部分があり、そこが庄痛点となることが多いので、そこへ局所麻酔剤を注入(ブロック)します。

診断が早げれば、治療効果は劇的で、一回の圧痛点ブロツクで痛みが消失することもあります。Jさんの場合、長い間無理を続けていたため慢性の筋肉疲労と広い範囲での筋硬結(筋肉のしこり)があり、圧痛点ブロックの効果は劇的ではありませんでした。しかし同時に心理的にも対人不安が強かったため、温めてマッサージする物理療法とともに、心理療法を加えることによってしだいに痛みは改善していきました。この筋筋膜痛という病態はあまり有名ではありませんが、実際の痛みの臨床場面では多くみられます。特に痛みを扱う医師にとっては、こういう病態があるということをまず知らなければなりません。そうでないと患者さんに対する対応がうまくいかないことになります。
 
脳の痛み 心の痛みー慢性痛からの開放をめざしてー
          
                  北見公一   (三輪書店)


最も身近であって、最も縁遠い「筋痛症候群」 

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外来で診ている痛みはほとんどが筋筋膜性疼痛症候群です。圧痛点をブロックすると痛みがやわらぐということは、筋筋膜性疼痛のひとつの証拠です。それは、生理学的にも薬理学的にも合理的な説明がつきます。

急性の場合は劇的に効きますが、強い不安や抑うつが原因の筋筋膜痛の場合は、それだけでは治癒しないことが普通です。また、補償のからんだケースも難しいことがあります。

転換性障害(ヒステリー;身体表現性障害)は筋筋膜性疼痛かどうかは疑わしいです。

慢性化したものにたいしては、心身医学的立場で、治療が必要です。筋筋膜性疼痛症候群は心理・社会的要素が背景にあります。



by junk_2004jp | 2005-08-27 13:55 | 痛みの生理学


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