心療整形外科

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2006年 03月 29日

神経脱落症状

椎間板ヘルニアガイドライン

第5章 予後

一般に、腰椎椎間板ヘルニアの手術適応は急性の膀胱直腸障害を呈した場合を除き、進行する神経脱落症状が認められる場合、Lasegue徴侯などの神経緊張徴侯が強陽性で重篤な神経脱落症状を伴う場合、手術以外の保存療法が無効であった場合であるとされている。____________________________________________


腰椎椎間板ヘルニアの治療の最前線(教育研修講座ー第77回日本整形外科学会学術総会において教育研修講演として発表した)

ADL、QOLの著しい低下や著明な神経脱落症状(感覚低下,筋力低下)が存在すれば早々に手術的治療を考慮すべきであろう。
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このように整形外科の一応権威ある文献の中に神経脱落症状(つまり、神経麻痺症状)という言葉がでてくる。

しかし、私は30年間医師生活の中でヘルニアで神経脱落症状を呈した症例をみたことがない。(頚部脊髄症、馬尾症候群は除く)・・・私が見たことがないだけかもしれないが。

PTの方も見たことがありますか?神経原性筋萎縮か筋原性筋萎縮かぐらいは見た目で判断できるでしょ。あなたの知人にいますか?TVや本でみたことがありますか?ヘルニアのために下肢が麻痺して杖をついている人、身障者手帳を持っている人をみたことがありますか?世界の医療後進国で問題になっているというのを聞いたことがありますか?

もしあるのなら、神経脱落に陥ってしまった症例の外観の写真や、筋生検の写真を見てみたいものです。私は筋生検をルーチン検査にしろといっているのではありません。神経原性筋萎縮の証拠として教科書に出ていてもいいのではないかといっているのです。

もし神経脱落症状を呈する可能性があるのなら、腰痛に屈するな..。: Back Pain: Don't Take It Lying Down... (オーストラリアの公的キャンペーン)、"Working Backs Scotland":腰痛の考え方を変えて、その影響を軽減"(スコットランドの公的キャンペーン)などは、大きな問題を含むことになります。

サーノ博士のヒーリング・バックペイン」も非難の嵐をうけます。「あなたを信じたばかりに、適切な医療を受ける機会を失い神経脱落症状になり身障者になった。」社会問題になるかもしれないのです。



ブロックの血腫で麻痺
手術で麻痺

このような残念な出来事は時々耳にします。これが本当の神経脱落症状です。
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by junk_2004jp | 2006-03-29 00:43 | ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾 | Comments(6)
Commented by TEPCO at 2006-03-30 12:16 x
質問です。

頚部脊髄、馬尾神経は構造的に神経脱落症状になりやすいのでしょうか?
こういった症状は頚髄、馬尾の神経圧迫によってなるのでしょうか?
Commented by junk_2004jp at 2006-03-30 12:38
頚部脊髄症とは、頚部で脊髄マヒが起きているということで、その原因として、後縦靱帯骨化症やヘルニアや腫瘍や外傷などがあります。

いずれもとても希で、私のような規模の医院では数年に1例ぐらいの割合です。歩きにくいというような愁訴です。

馬尾症候群は急性の膀胱直腸障害です。緊急オペの対象です。私はその疾患に出くわした経験がありません。

腰には脊髄がなく馬尾神経になっているのです。

http://junk2004.exblog.jp/2328959/
Commented by TEPCO at 2006-03-30 15:15 x
>腰には脊髄がなく馬尾神経になっているのです。

馬尾になっているから、腰部にヘルニアや後縦靱帯骨化症が起きても麻痺になりにくいのですか?

あと先ほど、先生と神経内科の先生のコメントを拝見し、それぞれ専門の立場でいろんな見解があるのだなと思ってみていたのですが、神経内科の先生の言う
>問題が生じる多くの場合には、元からの脊柱管狭窄、椎体の配列のずれや辷り、骨棘形成などを その部位に伴っていることが殆どではないかと思われます。

というのはヘルニア以外の圧迫疾患であれば、脱神経や神経再支配が
起こるという解釈でいいのでしょうか?またなぜ?
Commented by junk_2004jp at 2006-03-30 16:32
「損傷モデル」は失敗の連続だったというのが世界の流れです。私のHPのトップをみてください。
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そのような病態は頭の中で描くことができますが、現実にはいないのです。

entrapment neuropathy (絞扼性神経障害)といいます。これは神経麻痺の状態です。痛みを伴っている場合は二次的に発芽により神経の混線がおきたものと思われます(神経因性疼痛)。

「脊椎の変性が原因でこのようなことはおこりません。」と言い切るべきです。脊椎は十分強いのです。

http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_539.htm

また、末梢神経は脊椎からの出口の部分では硬膜に覆われていて圧迫にはかなり強いのでしょう。
Commented by TEPCO at 2006-03-30 18:01 x
回答ありがとうございます。

医師たちも『損傷モデル』を学んできたため、急には変えられないのでしょうね。。

ただ一患者として、そういった『仮想モデル』により治らない、一生つきまとうといった呪いをかけられたくはないのです。



Commented by junk_2004jp at 2006-03-30 18:43
chronic pain(慢性疼痛)という概念が近年さかんに言われるようになりました。私が医師になったころは聞かれないことばです。

今日のブログで英訳しました。「chronic pain」でぐぐると3700万ヒットします。日本ではまだ慢性疼痛(慢性痛)=chronic painという概念はまだそれほど浸透しているわけではありません。

6ヶ月以上、連続して、断続的に痛みが続く状態をいいます。痛みそのものが治療の対象となります。もはや、そこにはヘルニアとか、軟骨とかいった言葉はでてきません。

ある日を境にして急性痛/慢性痛と分かれるわけではないので、痛みに対して急性痛も慢性痛も整合性のとれた理論が必要です。

痛みというのはいつの場合も生理学的な変化なのです。(それに損傷や感染症や悪性腫瘍が合併してこともあるだけのことで、それらは別途治療なのです)

急性の期間は比較的簡単に治るのですが、慢性化するとやっかいになるのです。だから、痛みはなるべく我慢するのではなくて、速やかに鎮痛することが重要です。


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