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心療整形外科

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2006年 10月 23日

ぎっくり腰で動作恐怖

Aさん(40歳代前半、女性)は、最近、度重なるぎっくり腰で10分ほどの買い物も苦痛になってきました。

4年前、仕事が激務になっていたときにひどいぎっくり腰になり、救急車で入院。MRIでは、爪の先ほどの出っ張りで手術の必要ない椎間板ヘルニア(4番、5番の間)という診断で、10日ほどで退院しました。1ヶ月ほど、ブロック注射を打ちに通いました。

最近またぎっくり腰がたびたび起きるので、他の医師にみてもらいました。

レントゲンの説明では、特発性側わん症と言われましたが、この程度ならそんなに問題ではないとのことでしたが、ひとつ大きな不安となってしまったのが、4番の腰椎にヒビの様に写っているものがあり、だるま落としのように4番だけ特にずれているように見えることです。

15歳くらいの時にできた傷で側わんになりそのまま慢性となっている。と、その先生はおっしゃったのですが、20歳代までは年に一度くらいのぎっくり腰以外は元気にスポーツもしていたので、4番がずれるきっかけは4年前のヘルニアではないかと思います。「分離症といわれたことないですか?構造上の問題でぎっくり腰が起こりやすくなってます」と言われました。


ぎっくり腰で動作恐怖_b0052170_1712333.jpg

レントゲンでは軽度の側彎症がみられますが、外見ではわかりません。このような程度の側彎症はしばしばみられます。痛みとは無関係ですので、聞かれない限りは私は説明しないようにしています。

腰椎分離症があるかないかはこの写真ではわかりません。斜位の写真が必要ですが、あってもなくても痛みには無関係です。腰椎の下関節突起がヒビが入っている状態を腰椎分離症といいますが、健常者でもしばしばみられるとのことです。ある人種では60%もの人に見られるとのことです。

このレントゲン写真の印象は年齢相応で特に異常があるわけではないと思います。Aさんが構造上の不安を払拭するために、本人の許可のもとに掲載しました。

Aさんは両側の腰腸肋筋に筋硬結があり強い圧痛がありました。筋筋膜性疼痛症候群です。

ぎっくり腰で動作恐怖_b0052170_1810264.jpg


病態生理に関する事実無根の概念を患者に押しつけ、治療に携わる医師の私的見解を患者に披露する複雑な治療行為の1要素である。患者はこれらの診断によって永遠に変えられるが、良いほうに変えられることはあまりにも少ないと博士は主張した。

医師による忠告が、腰痛、その病因、治療および予後について非現実的で有害な考えを助長していることがしばしばある。

脊椎のX線像の陰影についてあれこれ考えるのは、暇つぶしにはなる。しかし、非特異的腰痛患者にとって、そうしたX線所見はほとんど意味がない。

医者の暇つぶしだってw!

この文章の特異的、非特異的の表現は納得できます。「膝から下、あるいは下肢にしびれや痛みをあるのが特異的という」これは賛成できません。

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Aさんは構造的な問題をかかえているのではなく、習慣化した筋痛症のため動作恐怖に陥っているのです。認知行動療法がもっとも大切です。

by junk_2004jp | 2006-10-23 18:05 | 症例


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