2007年 03月 02日

医学は統計学?本質に迫らなくてもいいの?

そりゃそうだろ。 そりゃそうだわな。
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MRIによる健常者の年齢別異常検出率
Boden S.D.et al(J Bone Joint Surg Am 1990)
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このグラフでおなじみのボーデン先生がまた新たな調査報告をなさいました。

椎間板ヘルニアとそれに伴う下肢痛に対する手術と非手術的治療を比較する画期的なランダム化比較試験を実施した結果,いずれの治療法も有効であるが,手術のほうがQOLの改善は早いことが示唆されたとJAMA(2006; 296: 2441-2450)に発表した。

椎間板ヘルニアは疼痛症状を伴わずに画像検査で発見されることも多く,実際,同部長らが1990年に発表した研究では,健常者のMRI所見の約 3 分の 1 で椎間板ヘルニアが疑われた。米国では椎間板切除術の施行率は地域により異なり,世界的にはさらに施行率が低いこともあって,一部の施行例では非手術的治療と比べた手術の適切性・有効性に対する疑問が指摘されていたが,これまでは適切な治療法を同定するうえで十分なエビデンスが得られていなかった。

いずれの治療群でも,治療後 2 年間の疼痛軽減に関しては同等の成績であることがわかった。

手術群,非手術的治療群ともに,最初の 2 年間で著明な改善が認められた。改善度は全期間を通じ,また,すべての因子において手術群のほうが高かったが,当初の割り付けに従ったintent-to-treat解析では統計学的に有意差は出なかった。

「結局,最終的な治療法に基づくas-treated解析を行った結果,明らかに手術群のほうが成績は良好であった」と述べている。


ヘルニアは健常人でも1/3にみられる。
手術してもしなくても2年後の成績は同じ(当初の割り付けに従った解析では統計学的に  有意差は出なかった)
結局,最終的な治療法に基づく解析を行った結果,明らかに手術群のほうが成績は良好であった。


「あなたの痛みはヘルニアが神経を押さえているからです。」と宣告し、強烈な印象のMRIを見せておいてそれを手術で取る治療、物理療法,家庭での身体活動に関する患者教育/カウンセリングを実施し,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)に耐容性がある場合はこれを処方する治療??を比較したものです。

「強制的に割り付けた調査では統計的有意差なしで最終的に自分の意志で変更した治療法に基づく調査では手術群に有意差がでた。」

これは手術を自分の意志で決定した場合、その結果に満足する可能性が高いという心理学的なことなのだろう。

以上のようなことから、統計学者としてではなく自然科学者(医学者)として、ヘルニアと痛みの関係についてどのように推理すべきなのか?ボーデン先生、そこのところはどのようにお考えなのだろう。

手術は費用もかかるし何よりも危険がないわけでない。日本でもたまに死亡例がある。手術の成績は決して満足できる場合ばかりではない。何回も手術し固定術にまで至る人もいる。また、Failed back surgry syndrome になる可能性もある。

だれでも手術を避けてなおかつ早く治すことを希望する。

問題の提起そのものに問題があるのではないか?「椎間板ヘルニアとそれに伴う下肢痛に対する手術と非手術的治療

ヘルニアと痛みの因果関係が生理学的に証明できているわけではない。だから異なったメッセージを患者に宣告して治療すればまた違った結果になることはあきらかだ。

私は他医にて「ヘルニア」を宣告された下肢痛の患者の治療で、その前提を否定(ヘルニアが原因でない)することにより簡単に改善した症例をいくつか経験している。

ヘルニアが原因で下肢痛とはどういうことなんだろうか?明確に説明されたものに出会っていない。

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左のふくらはぎが痛いというのは素直に考えれば図Aだ。ヘルニアが原因で痛いというのは図Bのように考えるのか?

「異所性発火」という説をいう先生もいるし「関連痛」という先生もいる。どちらにしても苦しい。どちらにしても下腿に痛みを感じるのは脳の誤認ということなのだ。脳はヘルニアの所から発している電気信号をあたかも下腿から発しているように誤認しているということになる。これでは下腿にある圧痛点を説明できない。ヘルニアがあるばっかりに、なぜAとは考えてはいけないのか。ヘルニアがあってもなくても普通Aだろう。Aであってはまずいのか?

ヘルニアは痛みの原因ではなくて、しいて言えば筋痛症の結果と見る方が、すべてうまく説明できると思うのだが・・・。今はやりのChronic pain(慢性疼痛)の考え方にも矛盾しないし。ボーデン先生どう思う?
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by junk_2004jp | 2007-03-02 01:35 | ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾 | Comments(0)


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