2007年 11月 29日

痛みを診ることのできない医師たち②

痛みはexperience(体験)と定義されている。個人的な体験なのだ。他人がそれを否定できる性質のものではない。また逆にそれを客観的に証明できるという性質のものでもない。

医師はそれを診断しなくてはいけない。診断がさせなければ保険診療が行われない。

それをふまえて、画像診断とは何であろうか。それは痛みを伴うことがある特異的な疾患の有無を検査するということである。それは、悪性腫瘍、感染症、骨折などの明らかな損傷である。

これらがある場合でも痛みがあるかどうかは分かるわけではない。痛みを伴って以上のような特異的な疾患が見つかれば、痛みの治療とは別途にこれらに対して治療を行う必要がでてくる。画像診断はあくまでも除外診断なのだ。

除外診断の次は、どのような時に痛みが強くなり、また弱くなるか、心理的な背景はどのように影響を及ぼすかといった機能的要因や心理的要因を積極的に診断していかなくてはならない(積極的診断)。

痛みの診断において重要なのは治療的診断だ。治療の効果を見て推理していくわけだ。といっても闇雲に治療するわけではない。

痛みのメカニズムに沿って行われる。

もしすべてのポリモーダル侵害受容器にシリアルナンバーが付いていて、脳が完全にそのナンバー(部位)を識別できるとしたら誤診は生まれない。残念ながら脳は漠然としか識別できない。ときには違った部位に痛みを感じることがある(関連痛)。

医師は長年の経験で症状からどのへんのポリモーダル受容器が活性化しているかは分かっている。画像からは分からない。まずは圧痛点を調べることだ。そこは痛覚が過敏になっている。筋肉は緊張して硬くなっている。

そのポリモーダル受容器に対して局所麻酔をうつ。痛みが消えるか軽減すれば、そこのポリモーダル受容器が活性化していたという根拠の一つとなる。急性痛の場合はこのような治療でよくなる。

なぜそこのポリモーダル受容器が活性化していたのか。内因性の発痛物質が産生遊離されていたことによる。ではなぜ内因性の発痛物質が産生遊離されたのか。

構造的欠陥が内因性の発痛物質を産生するという生理学的な根拠はない。それは交感神経の緊張による微小血管の収縮による酸欠によると言われている。

ではなぜ交感神経が緊張するのか。一つは、外力が引き金、もう一つは心理的な緊張がある。

このようにして推理して「診断」するわけだ。

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痛みの悪循環が続くと神経回路に可塑的変化が生じるといわれている。それを慢性痛症という。治療は急性痛と違ってなかなか難しいものだ。

痛みは急性痛のうちに消してしまうこと。慢性化した場合は多面的に治療が必要となってくる。
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by junk_2004jp | 2007-11-29 17:47 | 痛みの生理学 | Comments(0)


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