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心療整形外科

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2008年 05月 10日

痛みの愁訴に対して構造的な病名を付けるのはいかがなものか

痛みは目に見えない、測れないというのは誰でも知ってますね。

ところが、椎間板ヘルニアだとか脊柱管狭窄症だとか変形性膝関節症だとかいう「構造破綻の病名」を付けるのはいかがなものでしょうか。これらの変化は画像診断で目に見えるわけです。

そのような構造破綻は健常人でもいくらでもみられるわけですし、痛みの多くは保存的治療でよくなります。

また、生理学でも構造破綻で痛みを説明するのは不可能なわけです。シロウトさんを煙にまくことはできるでしょうが。

このへんのカラクリを見抜けないとどつぼにはまってしまいます。

痛みの愁訴に対して構造的な病名を付けるのはいかがなものか_b0052170_1328125.jpg写真は後期高齢者保険のAさん(女性)のものです。車を運転して来院されます。月一程度でしょうか。山菜取りもされます。トリガーポイントブロックをするとすぐに痛みはとれます。腰痛のみで下肢痛はありません。(承諾済み)







メールでのご相談
腰部脊柱管狭窄症と診断され、大学病院で昨年と1昨年2回も手術しましたが、結果はむしろ足腰の痛みしびれ麻痺などが増強し、日々苦痛に悩む者です。MRIの結果は第3、第4腰椎間も開放されているという医師の診断ですが、症状は改善されないどころか悪化しているのです。どうすばよいのでしょうか?(**の72歳男性)


高齢者に多い腰部脊柱管狭窄は診断基準すらできていません。ですから、病院によって手術するしないについて見解の相違があり、整形外科医の間でも十分なコンセンサスが得られていません。外科医から手術を勧められた患者さんへの対応ですが、手術は考える必要はないだろうとお話してください。(FILE446

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「馬尾型が痛みではなくて麻痺で、根型は痛み」(脊柱管狭窄症診断サポートツール)私はこのような理論は信じられません。ちょっと圧迫される部位が違うだけで生理学的に反対の現象が生じるなんて。脊柱管狭窄症の概念は極めて疑わしく思っています。馬尾型はあるんでしょうが・・。

Medical Tribune[2008年5月8日(VOL.41 NO.19) p.60]より

~脊椎管狭窄症手術~すべての主要アウトカムで有意な改善

〔ニューヨーク〕ダートマス・ヒッチコック医療センター(ニューハンプシャー州レバノン)整形外科のJames N. Weinstein部長らは,脊椎管狭窄症の手術を受ける患者では手術を受けない患者に比べて,すべての主要アウトカムに有意な改善が見られるとNew England Journal of Medicine(2008; 358:
794-810)に発表した。

手術患者の63%が改善と回答

Weinstein部長らは,米国の13施設の脊椎クリニックで,12週間以上の症状の既往を有し,脊椎すべり症が見られない脊椎管狭窄症の手術候補者のうち289例をランダム化コホートに,365例を観察コホートに登録した。被験者は減圧手術または通常の手術以外の治療を受けた。

評価した主要アウトカムは,6週,3か月,6か月,1年,2年の時点におけるMedical Outcomes
Study 36-Item Short-Form General Health Study(SF-36)と修正Oswestry Disability
Indexが示す肉体的苦痛と身体機能であった。

検討の結果,2年後の時点で,手術にランダムに割り付けられた患者の67%が手術を受けていた。さらに,手術以外の治療に割り付けられた患者のうちの43%も手術を受けており,これも手術群として評価した。また,手術を受けた患者群では63%が著しい症状の改善を報告したのに対し,手術以外の治療を受けた患者群では29%にすぎなかった。

苦痛と機能に関する患者の自己申告では両群とも2年間で改善が見られたが,最終スコアは手術群で60ポイント台,非手術群では40ポイント台前半であった。両コホートの結果を組み合わせた補正後の
as-treated analysisの結果,すべての主要アウトカムについて手術群は3か月後から2年後まで有意に優れていた。

今回の研究は米国立衛生研究所(NIH)が支援するSpine Patient Outcomes Research Trialの結果に基づいて行われた。


2年後に手術群63%、非手術群29%が著しい症状の改善があった。これを読むと手術のほうが優れていると思うかもしれないが、手術をしても6割の人しかよくなっていないし、手術をしなくても3割もの人がよくなっているわけだ。

脊椎クリニックで「貴方の痛みは脊椎に原因がある」と説明を受けた人々に対する調査だということを忘れてはいけない。

「貴方の痛みは脊椎に原因はなくて筋肉に原因がある」と説明を受けて筋肉に対して治療すればまた違った調査結果になることだろう。

人間とはそんなものなのだ。

by junk_2004jp | 2008-05-10 12:59


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