心療整形外科

junk2004.exblog.jp
ブログトップ
2008年 10月 11日

私の治療法

焚き火をする時のことを考えてみますと、最初は薪をいくら積み上げてもすぐには火がつきませんが、ひとたび燃え出すと周りからどんどん酸素を吸い込んで、薪をくべればくべるほど勢いよく燃え上がります。

これは炎が燃えることによって周囲に空気の流れができて酸素が流れ込み、さらに燃え上がるというプラス方向の循環が起きるためですが、痛み系もそのような循環が起きやすいしくみになっているということなのです。

            「痛みを知る」 熊澤孝朗・著  より


ポリモーダル侵害受容器から生じた痛みがこのようにして、増強していくことがあります。焚き火の例にたとえると、最初はバケツ一杯の水で消火できたのですが、次第に火の手が大きくなり、手に負えなくなってしまうことがあるのです。

熊澤先生によると、痛覚神経の回路そのものが調子が悪くなってしまうのを「慢性痛症」といい、痛みそのものが病気となってしまうのです。つまり、火災報知器のシステムエラーが生じてしまうわけです。

慢性痛症と急性痛では痛みのメカニズムが違うので、治療者はそれを見極め、それぞれに合った治療法を用いるべきなのです。

当然、急性痛のときに痛みを消してしまうことが重要ですね。それには最も効果的なのが局所麻酔だと思っています。次ぎは消炎鎮痛剤でしょうか。

構造と痛みは分けて考えてください。

打撲や捻挫で来院した患者さんにも患者さんの承諾があればすぐに圧痛点に局所麻酔を打ちます。その方が治りがうんといいのです。

固定すべき損傷があればその程度に応じて固定すればいいのですが、大抵の外傷はその必要がありません。固定よりも緩やかな運動のほうがなおりがいいものです。

ぎっくり腰や五十肩、膝痛、顎痛も考え方は同じです。急性痛の場合は痛いポイント(圧痛点≒ポリモーダル受容器)の局所麻酔注射が有効です。大抵、1~数回で治癒するものです。

ところが患者さんや多くの医師は、痛みの原因を探ろうとします。そのためにいろいろな検査をします。火が燃えたままで。

そして、火災とは無関係な構造上の欠点、ヘルニアとか軟骨の老化とかをあたかも火災の原因のように指摘するわけです。

それは患者さんに不安を与えて、治療としての安静を指示する結果になります。火に油を注ぐようなもので、慢性痛症に向かってまっしぐらですね。

生じた痛みがしばらくで消えるのか、慢性痛症となっていくのか誰にも分かりません。分かる方法がないのだから、さったと消火(鎮痛)すればいいのです。局所麻酔を打つことをそれほど敷居を高くする必要はありません。

痛み止めを嫌う人もいますし、原因が分からないと治療ができないと思っている人もいます。そのような場合も少なくないのですが、私はなるべく説得して局所麻酔を圧痛点にしています。

これをトリガーポイントブロックというのかどうかは知りません。

慢性痛症となってしまった症例でも急性痛は混在しているものです。

慢性痛症は痛覚神経回路そのものの不具合ですから、局所麻酔の圧痛点注射が急性痛のときのような効果がないこともあります。

慢性痛症の場合、私は鍼治療のようなイメージも込めて圧痛点注射をしています。私は鍼を習ったことはないのですが、ツボを刺激して鎮痛効果を得る方法を利用しようとしているのです。

これをトリガーポイントブロックというのかどうかは知りません。

慢性痛症の場合は、認知行動療法、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗不安薬などを合わせ使用することもあります。

慢性痛症を作らないことがまずは一番大切なことだと思います。それには患者さんも医師も痛みに対する知識を身につけることが大切ですね。

神経が押さえられて痛い、軟骨がすり減っていて痛い、半月板が悪くて痛い、すべり症で痛いなんていつまでも20世紀の医学を引きずっているようではいけませんよ。

どのような治療法をトリガーポイントブロックというのでしょうか。トリガーポイントに局所麻酔をうつことなのですが、私の場合は圧痛点注射という感じです。圧痛点の中にはトリガーポイントも含まれていることでしょう。私はなるべく注射の効果があるかどうかその場で確認しています。

このような注射のテクニックは深さもありますしある程度の試行錯誤が必要なのです。硬膜外ブロックのように、硬膜外腔に局所麻酔を入れるのとはワケが違うのです。

一口にトリガーポイントブロックといっても医師によってそのイメージが異なるのです。私は私の方法でやっているのです。

TTさんのコメントを拝借します。

電話でトリガーポイント注射をやってますかと聞くとやってるというので、そのペインクリニックに行ってきました。

小臀筋のトリガーポイントの注射をしてくれというと、坐骨神経ブロックですねと言う。小臀筋のトリガーポイント注射って坐骨神経ブロックっていうんだ、などと思ってしまいました。

これは自分の失敗で反省しています。なんか注射したときに場所が違う気がする。痛みも全く引かないので後で問いただすと、小臀筋トリガーポイント注射とは全然違う。

医者いわく、痛むのは神経であって筋肉ではないと言う。まあそうでしょうが原因は筋肉なんですけど。そもそもそんなこと言ったらトリガーポイント注射の存在意義がないでしょ。

トリガーポイントの意味自体を理解してなさそうなのでそれを指摘すると、トリガーポイントの注射はやるが(いや、あなた知らないでしょ)、方針を決めるのは医者であって患者ではないと言う。私の診断は間違えていない、素人は口出しするな、っていう感じでしたね。

ちょっと落ち着けって・・・誤診しなければそれでいいんですけど、素人の私未満の知識ではねえ・・・

時間とお金の無駄でしたが、かなりの医者がトリガーポイントという言葉自体知らないことを身をもって感じることができたのが収穫でした。

これから加茂整形外科のような知識の豊富な病院以外に行く方は、各人がしっかりした知識を持って「何々筋にトリガーポイント注射をうって弛緩させろ」と明確に医者に伝えた方が間違いがありません。

トリガーポイント注射を知らないのに知っているふりをする医者も要注意です。筋肉は痛くないと言う場合はお金を払わずさっさと他の病院を探しましょう。決して無知な医者に頭を使わせてはいけません。誤診のもとです。

[PR]

by junk_2004jp | 2008-10-11 18:23 | 痛みの生理学 | Comments(3)
Commented by アクビ at 2008-10-12 22:31 x
>方針を決めるのは医者であって患者ではないと言う

思わず声を出して笑ってしまいました。
・・・デジャブ・・・似たような経験を何度したことか。

>各人がしっかりした知識を持って「何々筋にトリガーポイント注射をうって弛緩させろ」と明確に医者に伝えた方が間違いがありません

私も加茂先生じきじきに同じような指導を受けました。
どの筋肉が痛い、とはっきり言える様に自分で勉強しなさい、と。
これは、TPB注射をする、しないにかかわらず、知っているに越したことはないと思います。

>知っているふりをする医者
それは最低ですね。
思いつきの発言で、どうにか医者のいいなりにさせようとする(これには、患者をさておき自分のメンツを守りたいという思いも無意識に働いている)。
患者はますます不安になる。
医者としては、本末転倒の対応ですね。

色々知るにつれ、正しい疼痛治療はなかなか認識されないことを思い知らされます。
不思議でなりません。
Commented by TT at 2008-10-13 14:31 x
アクビさんもやはりいろいろ苦い経験をされたようで。私はまだまだひよっこです。

加茂先生、いろいろ勉強になります。
ちゃんとした診療をしてもらうためには、まず神経ではなく筋肉が原因の痛みをその医師が認めているかどうかを確認する必要がありますね。認めないようであればその医師は除外。認めるならば、坐骨神経領域に強い痛みを感じる、その原因は小臀筋の圧痛点にあることを伝える。その小臀筋の圧痛点に対して局所麻酔を打ってもらう。あくまで筋肉に注射を打つと言うことを強調したほうがいいですね。トリガーポイント「ブロック」という言葉は、知らない医者は硬膜外、神経根、坐骨神経「ブロック」と勘違いする可能性があるので使わないほうがいいですね。

医者に勉強してもらうためには、患者の方がもっともっと勉強しないと駄目ですね。盲目的に医者が全部治してくれるという患者側の甘えた考えが、昨今の整形外科やペインクリニックが古い考えから脱出できない原因の一つのような気がします。私ももっと精進します。
Commented by アクビ at 2008-10-13 18:54 x
またまたデジャブ・・・。
私は、整形外科医に「TPB注射」をしてもらえるか聞いてみたところ、「そんな注射してたらおばあさんみたいな体になっちゃう」って言われました。
後で考えたら、まさしく硬膜外ブロックなどと勘違いしていて、TPBのことは知らなかったんでしょう。

知ったかぶりして患者が傷つく(&混乱する)ような発言でその場を繕うより、知らないなら「知らない」と正直に言って欲しいですね。
でも、それを言ったら自分のメンツが立たないからいえなかったんだと思う。
正直に「知らない」と言ってくれたほうが、こちらは心の傷が小さくて済みます。
そういうことまでは思いつかないんでしょうけど。

途中までは信頼していたお医者さんだっただけに、いよいよ見捨てられた、と思ったら、しばらくそのショックから抜け出せませんでした。
最近はようやく客観的に受け止められるようになりましたが。
お医者さんとのコミュニケーションでは色々苦労しております。
私のキャラにも問題あるのかも(ーー;)


<< 慢性痛という概念ができた今      線維筋痛症はめずらしい病気ではない >>