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心療整形外科

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2011年 08月 29日

椎間板変性が認められる労働者に対する固定術:話し合いによる意思決定の良い機会か?

Fusion Surgery for Injured Workers:An Opportunity for Shared
Decision-Making?

患者擁護の立場をとるTerry Corbin氏は、Spine誌のウエプサイトにあるSpine Columnのプログの論評において、画像検査で変性性変化が認められる慢性腰痛の労災補償請求患者では、固定術を含めた治療選択肢を評価する上で話し合いによる意思決定の過程がおそらく最良の方法であると提案している (Corbin,2010を参照)。

Cochrane Collaboration Back Review Groupの消費者代表メンバーであるCorbin氏によると 「椎間板変性疾患を有する患者の腰痛に対する手術の適応については意見の対立が激しくなっており、こうした症例は話し合いによる意思決定の最適の適応となる」。

博士は「患者の選好、価値観、およびリスク許容度を考慮して治療を選択すべきである」と付け加えた。

Corbin氏は最近の電話インタビユーで、労災補償請求患者は慢性腰痛の外科治療を取り巻くすべての不確実性を認識する必要があると語った。医師は固定術による「最良の筋書き」を患者に説明するだけで済ませてはならないと博士は強調した。

「患者に対して臨床的にかなり有益であるという保証を与えるべきではない」とCorbin氏は強調した。それは科学的エビデンスの示すところとは異なる。

「患者は、疼痛と活動障害が脊椎固定術によって改善するどころか悪化する可能性もあること、また、脊椎固定術で労災補償を請求しない患者と同様の改善が得られる可能性が低いことを理解すべきである」と博士は述べた。

診断の不確実性も 一因である

固定術の適応候補患者は、腰痛の原因を腰椎の特定の異常と安易に結びつけられない点についても理解する必要がある。

腰痛の誘因となりうる解剖学的構造は多数あり、疼痛発生源を明確に特定できることが証明された診断検査はない。

「慢性腰痛は依然として謎の多い疾患である」と産業医のTrang Nguyen博士とDavid Randolph博士は最近の電子メールで強調している。「一連の治療によって意義のある長期的な治療効果が得られない場合、慢性腰痛が必ずしも身体的疾患によるわけではないことを疑うべきである」。

多様な心理的、社会的、経済的間題が関与している可能性があり、固定術の適応候補患者はその点を認識すべきである。

「患者に何を説明するか?」

Steven Atlas博士は最近の電子メールで、話し合いによる意思決定の過程において正確な情報提供が難しい臨床的判断をする患者の役に立つという点に同意した。

「画像検査で変性性変化が認められる慢性腰痛の労災補償請求患者には、何を説明すべきか?」とAtlas博士は疑問を投げかける。

「私なら、固定術と保存療法のリスクとぺネフィットについて患者と話し合い、固定術を受けても治癒する可能性が低いことを説明する。疼痛は軽減するかもしれないが、以前と同じ仕事に戻れる可能性は低い。身体的負担の重い仕事の場合には特に低くなる」とAtlas博士は述べた。

「麻薬を慢性的に使用している患者に対しては、手術によって疼痛が軽減されても麻薬を完全に中止できるかどうかは不明であると説明する。また理学療法、疼痛管理、および精神的支援を取り入れた積極的なリハビリテーションが手術と同じくらい有効と思われることも説明する」。

「最後に、短期間の合併症、疼痛の悪化、および初期に軽快が得られた後の進行性の症状など、手術には潜在的リスクがあることを説明する」とAtlas博士は述べた。そして博士は患者に、保存療法ならこれらのリスクに遭遇することはないだろうと説明する。

「最終的には、私は患者に脊椎固定術を受けることを思いとどまらせ、経過観察の回を重ね、 時間をかけて現実的な話し合いをしようと試みる」。

Alias博士は 「最終的に私の目指すところは、 それほど良い選択肢がない中で患者のインフォームドチョイスを手助けすることである。 これは患者と医師との話し合いによる意思決定の核心である」。

私の経験上、 患者は十分な情報を与えられれば脊椎固定術を希望しない。 こうした理由で私は話し合いによる意思決定の過程を支持する」。

「この高額な費用のかかる手術を、 有益であると証明されるまでは中止すべきだと主張する人もいるかもしれないが、 米国では現在そのような方法を取っていない。 しかし、 脊椎固定術の実施率が低下しないようであれば、 その時ははっきり異議を唱えるべきであろう」 とAtlas博士は述べている。


参考文献:

Corbin TP,Point of View,clinical outcomes after posterolateral lumbar fusion in work-
ers' compensation patients:A case-control study,Spine,2010;35(19):l820.

The BackLetter 25(11):129,2010

# by junk_2004jp | 2011-08-29 20:34 | BACKLETTER
2011年 08月 28日

アメリカのこの手の研究は

労災補償請求患者における脊推固定術の良くない結果

いつも思うのだが、医学というより統計学ですね。

医者でなくて統計の専門家がやればいい。

痛みとはなにか?

なぜ慢性化するのか?

なぜ固定する必要があるのか?

そのようなことはアメリカの人も考えているのだろうか。

不安定だと痛いのか? 赤ちゃんの頚は不安定だけど痛そうにはない。

アメリカのこの手の研究は_b0052170_2273250.jpg


彼女の小指は不安定だが痛みはない。

腰椎が不安定で身体障害者になった例があるのか。固定術をして身体障害になることはあるが。

不安定というのは動的なレントゲン撮影(前屈、後屈)で認定されるわけで、実際の生活ではなにも不安定を感じているわけではない。

椎間板性疼痛、椎間関節性疼痛、神経根性疼痛、これらは整形外科医が考えだした妄想ではないのか。

脊柱の変性所見は健常者でも普通に見られる。

筋肉の状態を観察したことがないのか。

痛みの電気信号が脊椎を固定するとどうして止まると考えるのか?

ブラジルやフィリピンなどで行われている心霊治療(心霊手術)の治療成績を研究してみるのも面白い。

固定術と比べてどうなるだろうか。

かえって悪化する可能性は固定術と比べてどうなんだろうか。

もし固定術と比べて効果に差がないのなら、費用が安いであろうし、副作用の少ないであろう心霊治療を勧めるのだろうか。

ただし信じなければ効果は期待できない。



# by junk_2004jp | 2011-08-28 02:23 | 慢性痛
2011年 08月 27日

労災補償請求患者における脊推固定術の良くない結果

Dismal Results for Spinal Fusion Among Patients With Workers' Compensation Claims

脊椎治療に携わる医師は、 労災補償請求患者に脊椎固定術を勧めないようにすべきであろうか? そしてさらに重要なことには、 患者はこの治療選択肢を勧められたら必ず断るべきであろうか?

労災補償患者に対する固定術に関する一連の研究 (5ぺージの表Iを参照) の結果を知れば、こうした疑問が生じるのは当然かもしれない。

最近発表されたOhio州の対照コホート研究によると、 固定術は慢性腰痛とそれに関連する活動障害を軽減するが、 同様に悪化もさせるようである。

Trang Nguyen博士らは、 脊椎固定術を受けた男女の労災補償請求患者725例と保存療法を受けた同数の比較対照群についてレトロスペクテイブな調査を行った (Nguyen eta1.,2010を参照)。

その結果、脊椎固定術を受けた被験者で2年間の追跡調査期間内に仕事を再開した患者は26%にとどまることが明らかになった。 手術を受けた患者の3分の1以上が術後合併症を経験し、27%が2回目の手術を受けていた。

脊椎固定術を受けた患者の4分の3以上が手術後もオピオイド使用を継続していた。 そして、 オピオイドの平均1日用量は手術後に41%も増加していた。

Nguyen博士と共著者のDavid Randolph博士は最近の電子メールで、 オピオイド使用量の増加は気がかりだと述べている。使用量の増加は機能的な改善の促進にはつながらないようであった。

博士らは「オピオイドの使用が仕事の再開に影響を与えるという我々の印象は変わらない」としている。多変量モデルにおいて、オピオイドの総投与量は、手術を受けた被験者の合併症、再手術、手術前の合計欠勤日数、および法定代理人の登場への有意な予測因子であるとともに、仕事を再開しないことの有意な予測因子でもあった。

2009年にWashington州で行われた研究では、脊椎固定術を受けた労災補償請求患者の死亡原因の第1位はオピオイド過量投与であり、気がかりとされる鎮痛薬に関連する死亡率は約1%であった(Juratli et at., 2009を参照)。またOhio州で行われた研究では、試験期間中の死亡例数は対照群11例に対して固定術群では17例であった。

Nguyen博士とRandolph博士によると「これらの被験者の死亡原因については、予備的調査の段階であるが、大部分の死亡は薬剤に関連することが明らかになった」。

それでは、この研究の総合的な結論は何か?「椎間板変性、椎間板へルニア、あるいは神経根障害の診断に対する腰椎固定術は、労災補償請求者では活動障害、オピオイドの使用、長期欠勤、および仕事再開困難の有意な増加と関連する」とNguyen博士らは結論づけた(NguyenetaI.,2010を参照)。

Nguyen博士とRandolph博士は「椎間板変性疾患と椎間板へルニアに対するこの手術のアウトカムから考えて、これは治療選択肢として適切でない」としている。

危険な賭けでしかない?

労災補償患者においては、この種の手術は危険な賭けでしかないように思われる。 Kentucky州で最近行われた症例対照研究では、受傷し、その治療に固定術を選択した労働者の大多数で、この手術の有意な臨床的有用性は認められなかった。

Leah Carreon博士らによると、固定術後に活動障書(Oswestry活動障害度で評価) に臨床的に意味のある改善がみられたのは労災補償請求患者の19%のみであった。身体的状態(sF-36質問票で評価)に臨床的に意味のある改善がみられた患者はl6%のみであった。

固定術を選択した労災補償請求患者は、研究開始時も終了時も平均疼痛スコアが気がかりなほど高かった(Car,eonelal.,2010 を参照)。

「外科医は労災補償患者と腰椎固定術の有効性を話し合う場合に慎重を期すべきであり、術前の健康関連の生活の質が低い患者ではなおさらそうすべきである。労災補償患者には腰椎固定術の前後で心理・社会的、職業上およびリハビリテーション面での追加的な支援が必要と考えられる」とCarreon博士らは述べている(Carreonetal., 2010を参照)。

更なる研究の必要性

残念ながら、労災補償請求患者に対する固定術に関する今日までのすべての研究では、多様な診断の患者をひとまとめにしていた。そのため、このような集団では単一の適応症に対して脊椎固定術が有効か否かは不明である。

Steven Atlas博士はSpine誌の“The Spine Column” というプログでCarToon博士らの研究を論評し、労災補償請求患者の手術および保存療法のアウトカムについて更なる研究が必要であるとしている (Atlas,2010 を参照)。

Massachusetts General HospitalおよびHar- vard Medical Schoolのプライマリケア医であるAtlas博士は、 Maine Lumbar Spine StudyおよびSpine Patient Outcomes Research Trialの被験者を含む労災補償請求患者において脊椎手術のアウトカムを検討する複数の研究を実施した(Atlas et at.,2000,2006, 2010を参照)。

Alias博士によると「労災補償患者は固定術のアウトカムが劣っていたという観察結果から、その後の労災補償患者の治療方法が決まるわけではない。…これらの研究や他の研究が示しているのは、比較的均質な基礎的条件を有する労災補償患者におけるさまざまな治療のアウトカムの比較が急務だということである。労災補償患者における別な治療法との比較を行う無作為比較研究が必要である」。

Nguyen博士らも無作為比較研究(RCT) の必要性を主張しており、Alias博士と同様、関連する可能性のあるすべての影響を考慮できるのはRCTのみであると指摘している。

Nguyen博士とRandolph博士は両者とも産業医であり、労災補償システムの中で無作為比較研究を行うことは可能であるが費用がかかるであろうと述べている。

そして博士らは「大規模RCTの実施は気の遠くなる仕事である」として、次のように述べている。「これはアウトカムを客観的に評価 できるような大規模多施設共同研究にすべきである。また、長期追跡調査を行って脊椎固定術の長期的影響を評価すべきである」。

よりよい研究が行われるまでの慎重なアプローチ

残念ながら労災補償システムは規制や管理の考え方が州によって異なることから、そのような研究を実施する上での障壁となる。無作為比較研究が完了するにはおそらく何年もかかる。それまでの間、何をすべきであろうか?

「仕事に関連した脊椎の病態があり、脊椎手術を検討中の患者については、今のところ慎重論が唱えられている」とAtlas博士は最近の電子メールで述べた。

「労働年齢の患者に対する手術を支持する最良のデ一夕が得られているのは、腰椎椎間板へルニアに対する顕微鏡視下椎間板切除術である。 しかし、利用可能なエビデンスから、そのような労災補償請求患者における手術の効果は良くても限定的であることが示されている」。

「慢性腰痛に対する脊椎固定術を検討中で労災請求を行っていない患者については、利用可能なエビデンスから手術の効果はさほど高くはなく、積極的なリハビリテーションと変わらないことが明らかである」と博士は指摘した。

したがって、画像検査で一般的な変性性変化が認められる慢性腰痛患者は、治療法の選択に慎重になるべきである。

Alias博士によれば「労災補償を請求している同様の患者は、手術の役割を検討する上でより一層慎重になるべきである」。

脊椎固定術はめったに行われない手術であるべきか?

整形外科医のStanley Bigos博士は最近の電話インタビユーで、労災補償患者に対しては脊椎固定術はめったに行われない手術であるべきだと強調した。

Bigos博士は、 この患者集団では特定の病態に対する脊椎固定術が決まった効果を発揮してきたとは言えないと述べている。

博士は「この手術には適応の見極めが必要である」 としている。この手術によって悲惨なアウトカムがもたらされることもある

そして「脊椎固定術はほとんどの労災補償請求患者には適さない。なぜなら、治療成功の確率が低く合併症と有害事象の発現率が高いためである」と付け加えた。

博士は、脊椎固定術は明らかに脊椎の不安定性のエビデンスを有するごく少数の患者集団に限定して実施すべきだと考えている (CalTageeetal.,2006を参照)。

また、そのような患者集団であっても、慢性腰痛のある労災補償請求患者はしばしば雇用問題や心理・社会的問題に直面しており、それによって治療の失敗や長期活動障害のリスクが上昇する可能性があることから、固定術を実施するかどうかは慎重に検討すべきである。さらに労災補償をめぐる争い自体が治療成績を悪化させる可能性もある。


参考文献:

Atlas SJ,Point of View,Clinical outcomes after posterolateral lumbar fusion in workers'
compensation patients:A case-control study, Spine,2010;35(19):1818-9.

Atlas SJ et al.,Long-term disability and return to work among patients who have a herniated lumbar disc: The effect of disability compensation,JBoneJoinlSurg Am,2000;
82(l):4-l5.

Atlas SJ et al.,The impact of disability compensationonlong-term treatment outcomes
of patients with sciatica due toalumbardisc herniation,Spine,2006;31(26):3061-9.

Atlas SJ et al.,The impact of workers'compensationonoutcomesofsurgicaland non-
operative therapy for patients with a lumbar disc herniation: SPORT, Spine, 2010;
35(1):89-97.

CalTageeEJet al.,A gold standard evaluation of the“discogenic”diagnosis as determined by provocative discography,S/,me,2006;31(18):2115-23.

Carreon L et al.,Clinical outcomes after posteroIateraIlumbar fusion in workers' com-
pensation patients: A case-control study,Sprue,2010;35(l9):l812-7.

Juratli SM et al.,Mortality after lumbar fusion surgery,Spine,2009;34(7):740-7.

Nguyen TH et al.,Long-term outcomes of lumbar fusion among workers'compensation
subjects,Spine,2010[Epub ahead of print];doi:10.1097/BRS.0b0l3e3l8lccc220.

TheBackLetter25(11):121,127-130,2010.■
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# by junk_2004jp | 2011-08-27 21:39 | BACKLETTER
2011年 08月 26日

痛み系のルーツ

「痛みを知る」 熊澤孝朗著 より

痛みの刺激から身を遠ざけよう、身を守ろうという反応は生命維持の根源といえるもので、非常に原始的な生物でもからだに備わっている機能です。

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これはナメクジ魚で私たち人類のご先祖様です。

痛みから遠ざかろうとする反応は私たちのDNAにも深く刻まれているのです。なにしろこれがないと身を守れませんから。

痛みから遠ざかろうとするには筋肉を短縮しなければなりません。

すぐにもとに戻ればいいのですが、それが習慣になってしまうのです。

殆どの痛みは筋性疼痛です。

筋肉そのものが痛みの第一現場なのです。

痛みを認知して反応する脳が第二現場です。

第一現場と第二現場の間の情報のアップロード・ダウンロードです。

構造の変化は筋短縮の結果か、外力の結果なのです。

病院で受ける説明は痛みの原因ではなくて、結果の可能性が高いのです。


# by junk_2004jp | 2011-08-26 21:10 | 痛みの生理学
2011年 08月 21日

CTやMRIを医療費の無駄といいながら ・・・

私は「CTやMRIを医療費の無駄」といったことはありません。

疼痛性疾患において画像診断の意味は「悪性腫瘍、感染症、リウマチおよびその周辺の炎症性疾患、骨折などあきらかな外傷」の除外の意味しかないといっているのです。

無駄か無駄でないかは個人的な感想なので、そういうことをいうはずがありません。

効かなかった治療は無駄だったということもできますが、そんなことを治療の前から分かるはずがありません。

たとえばある薬が効くか効かないかはわかりません。

人生が無駄、存在が無駄・・・極端な言い方をすればこういうことにもなりますね。

なにが無駄でなにが無駄でないかということを議論するつもりはありません。


以前に掲示板で「日本の医療は海外から遅れている」と私が言ったという人がいました。

これも私は言ったことがありません。

海外の腰痛ガイドラインも使い物にならないといっているのです。

このように言っていないのに言ったと言われることは不快なことです。

私は椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が痛みの原因にならない、軟骨や椎間板の変性が痛みの原因にならない、これらは原因ではなくて結果だと10年前からネットで主張してきました。

未だ誰も名前を名乗って議論してきた人はいません。匿名の人と議論するつもりはありません。

この重要な問題に対して専門家はどう思っているのでしょうか。

多くの医師が言っていることが真実だと思っている人がいます。そうではありません。

「生理学に基づいて、どのように理解するのが最も合理的なのか」ということです。


# by junk_2004jp | 2011-08-21 08:35 | 医療不審