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心療整形外科

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2009年 05月 17日

痛み疾患のEBM

EBM(evidence based medicine=根拠に基づいた医療)

エビデンスがあるとかないとかいうのは、過去の文献調査なんです。

つまり、役人が「前例がございません。過去にそのような記載はありません。」ということと同じです。

二重盲検(医師と患者の両方を目隠し)、ランダム化比較試験(ランダムに治療法を割りつける)など研究デザインが高度なほど強いエビデンスとされます。当然症例数が多いほうがいいわけです。

血圧、骨粗鬆症、高脂血症など数値化できるものはEBMはある程度信頼できます。

一方、痛み疾患は数値化できません。痛みは個人の体験と定義されています。

たとえば、椎間板ヘルニアと診断された人に対する治療のアンケート調査ということになってしまいます。これではだめなわけです。

診断名を告げないで治療する、ということは現実的にはない。診断名を告げるということは診断した医師の個人的考えが刷り込まれるわけですから、その結果にはバイアスがかかるわけです。

また、TPBや鍼というような治療者のスキルに関係するもの、偽治療を設定することが困難なものは研究が一層困難なものにしています。

痛み疾患のエビデンスを求めることはとても難しいものなのです。

診断名を告げないで二重盲検、ランダム化比較試験を、数多くの症例することは不可能でしょう。

痛み疾患に対してエビデンスを語るのも大事ですが、それからどう推理してどのような治療をすべきか考えるべきなのです。

「前例がございません。」というのはエビデンス馬鹿のいうことです。

痛みのエビデンスを求めることは時間も数もかかるし、また研究デザインもとても複雑になります。

エビデンスを語る前に痛みのメカニズムを勉強して、いろいろな症例からどのように推理するのが妥当かということでしょう。

by junk_2004jp | 2009-05-17 12:24


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