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心療整形外科

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2010年 06月 30日

腰痛を特別扱いにする理由はない

私は従来から、nerve root pain (神経根性疼痛)やnonspecific low back pain(非特異的腰痛)の言葉の定義がとても気になっている。

こういった言葉の定義がしっかりしていないと、エビデンスもガイドラインも意味がない。

そこで、ガイドラインに詳しいTMS JAPANの長谷川淳史さんのブログより

「非特異的腰痛」というのは・・・殿部、大腿部に痛みを感じる場合で、・・・(43ページ)、「神経根症状」というのは・・・膝の下からつま先まで痛みが放散したり、・・・(44ページ)とあります。これだと、膝から上は非特定的腰痛、膝から下は神経根症状と言いきっています。


それに対して長谷川さんは次のようにお答えになっています。このお答えは当然のことだと思います。

しかしこの分類は、Waddell Gのコホート研究、Deyo RAらのコホート研究、van den Hoogen HMらの体系的レビューを基にRCGPのガイドラインがまとめたもので、
Frymoyer JWが報告しているような自然経過の違いによる分類のようです。つまり、「病態生理はともかく目の前の患者に何ができるか」というEBMの原点に従った回復速度による分類というわけです。


「神経根性疼痛」「非特異的腰痛」というのは回復速度による分類だったのか!

私が海外のこれらのガイドラインを全く信じていないのは、「神経根性疼痛」「非特異的腰痛」の言葉の定義が私の認識とかけ離れているからです。

痛みのメカニズムを理解している人がガイドラインの作成にかかわっているのか疑問です。

急性疼痛のメカニズムはわかっています。慢性化するメカニズムもここ10年で飛躍的に解明されたということです。

痛みの起こっている場所で痛みが回復する速度を「神経根性疼痛」「非特異的腰痛」という言葉を使って分類する意味は一体何なんだろうか。

腰痛を特別扱いにする理由はない_b0052170_12561768.jpg

この範囲の痛みを非特異的腰痛というらしい。上限はどこなんだろうか。下限はなぜ膝が選ばれたのだろうか。

腰痛を特別扱いにする理由はない_b0052170_12574477.jpg

この範囲に生じた痛みをnerve root pain(神経根性疼痛)というらしい。

私はこのような意味のない分類に反対する。

医学者というより、統計的分類学者のような感じがする。

痛みとかしびれといった、他人のexperience(体験)と定義されているものを統計学で分類数値化し、エビデンスとかガイドラインというのはとてもおかしいことだ。



by junk_2004jp | 2010-06-30 02:06 | 痛みの生理学


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