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心療整形外科

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2010年 12月 04日

受賞研究は椎間板変性の 「損傷モデル」 に異議を唱えるものである

Award-Winning Study Questions the"Injury Model"Of
Disc Degeneration

(THE BACKLETTER No.62)

椎間板変性の「損傷モデル」は椎間板の適応能力を無視したものである

Tapio Videman博士らの受賞研究は、近代的な職場環境と脊椎医学での「聖域(sacred cows)」の一つ、反復的な身体的負荷が椎間板に本質的ダメージを与えるという認識に異議を唱えるものである。

これは、この研究グループによる一連の影響力のある研究の一つであり、これらの研究は従来の椎間板変性の「損傷モデル」をむしばみつつある(破壊しつつあるという人もいる)。

Videman博士によると「このモデルは20 世紀後半に普及し今も広く支持されているが、筋骨格系の適応能力を無視したものである」。

Videman博士らの新規研究は、椎間板変性に対する身体的負荷の影響を調べるために効果的な研究デザインを用いている。 この研究は男性双生児のぺアを研究対象としたもので、一方の体重が相手よりもかなり重い〔平均約30ポンド(約l3.6kg)〕双生児について調べている。そのため、体重が重い方の双生児の腰椎椎間板は兄弟の椎間板よりもはるかに大きな生体力学的負荷を何年間も受けていたことになる。

研究結果は従来からの通念に異議を唱えるものであった。研究では、余分な身体的負荷が害を及ぼすというエビデンスは見いだされず、むしろ腰椎椎間板に有益な影響を与えたように思われた。

Videman博士は「我々の知見から、累積的かつ反復的な負荷が余分にかかった分、椎間板変性がわずかに遅れるというエビデンスが得られた」と述べ、「反復的負荷は適度であれば椎間板にとって必ずしも悪いものではない」と結論づけた。

この研究は、仕事や運動競技の際に脊椎により重い身体的負荷をかけてみたい、ただし安全に、と考える人々に対して肯定的なメッセージを送る。

しかし、Videman博士は次のような限定条件をつけている。「より重い負荷がかかった場合の椎間板の適応力を考慮しなければならない」。

椎間板は言うまでもなくヒトの身体で最大の無血管構造であり、並はずれて代謝が遅い。その結果、負荷の增大に対する椎間板の適応は徐々に行われる必要がある。しかしこれは、筋骨格系のほぼすべての構造にあてはまる(Videman,2009;Videman et al.,2009を参照)。

2つの脊椎学会における対照的な受け止め方

Videman博士は、最近数カ月間に2つの主要な脊椎学会で研究を発表したが、それら学会の受け止め方は非常に異なっていた。サンフランシスコで開催された北米脊椎学会(NASS)の年次総会では、この研究は医学およびインターペンション科学の分野の「2009年優秀論文賞」を受賞した。 研究は称資され、革新的なデザインとこれまでの常識を打破する結果に賛辞が集まった。

辛辣な批評

しかし、2009年5月にマイアミで開催された国際腰椎研究学会の年次総会では、研究に対する受け止め方はそれほど好意的ではなかった。一部の研究者は辛辣に批判した。

そうした研究者は、身体的負荷や外傷が椎間板変性に与える影響について、自身の仮説を支持する主張を行った。 主たる批判は、 体重増加に伴って発生する漸増性負荷と椎間板の強化は作業関連的な罹患の場合には認められないのではないかというもののようであった。 何人かの研究者は、 職場で求められる日々の身体活動がこの適応過程の妨げとなり、損傷や進行性の慢性疼痛につながる可能性があるという印象を受けていた(4ぺージの記事「椎間板変性の研究は神経を逆なでする」を参照)。

しかし、過去15年間に行われた研究(特にフィンランドにおける双生児研究)からは、仕事による身体的負荷が椎間板変性に与える影響はごく小さいことが示唆されており、そのような種類の外傷性の損傷が実際にどのくらいの頻度で発生するのか疑問が発せられている(次の記事「椎間板変性のリスクファク夕ー: 「従来の容疑者」の一斉検挙」を参照)。

相反するメッセージ

サンフランシスコのNASS年次総会で、Videman博士は、椎間板に対する身体的負荷の影響に関心をもつようになったのは労働衛生分野とスポーツ医学分野から相反するメッセージが発表されたことがきっかけであったと説明した。

「私はフィンランドで労働衛生分野の仕事をしたが、そこでは一般に身体的負荷は椎間板と脊椎に害を及ぼすと考えられていた」とVideman博士は述べた。

さらに「その後10年間、私はスポーツ医学の分野で仕事をしたが、そこでは漸増する身体的負荷は筋骨格系全体にとって有益と考えられていた」と続けた。

44組の双生児を対象にした研究

この矛盾を解決するため、Videman博士らは体重および腰椎への身体的負荷レベルが一致しない健康な一卵性双生児の男性44 組を対象に研究を行った。前述のように双生児の兄弟間の平均体重差は約30ポンドであった。

この種の双生児研究の利点は、さまざまな潜在的交絡因子のみならず遺伝的影響もコントロールできることである。

研究対象とする双生児は、フィンランドの全住民を代表するフィンランド双生児コホートから選択した。すべての双生児のぺアについて、教育、社会的階層、喫煙、職業上の負荷、余暇の身体活動、疼痛の既往、およびその他の因子に関するデ一夕を含む総合的な情報を入手した。

Videman博士らは、画像上の椎間板の信号強度の定量的評価、椎間板の信号強度の変動、椎間板の高さ、およびL1-L4に隣接している脳脊髓液の信号強度など、妥当性が証明された椎間板変性の評価尺度を用いて、被験者の椎間板に対する負荷の影響を追跡した(詳細はVidemanetal.,2009を参照)。

また、双生児の腰椎に対する身体的負荷は同一でないことを確認するため、体重の重い双生児の腰椎の方が骨密度が高ければ負荷は同一でないことが確認されるという前提のもとに、椎骨の骨密度の評価も実施した。

興味深い結果

結果は興味深いパターンを示した。双生児のぺアの身体的負荷は確かに同一ではなかった。体重が重いことは腰椎の骨密度が6.2%高いことに関連した。

椎間板の信号強度の結果も同様のパターンを示した。最近発表された研究によると「椎間板の信号強度の変動は体重が重い方の一卵性双生児で5.4%大きかった(良好であった)(p=0.005)」。

また、体重が重い方の双生児では椎間板の高さが高く (2.6%高い)、調整した椎間板の信号強度も高かった(2.9%高い)。しかし、これらの差は統計学的に有意ではなかった。

従来の考え方の矛盾

Videman博士らによれば、「生活様式は同様であるのに体重にある程度の差がみられる一卵性双生児の男性の場合、体重の重い方が椎間板変性の評価尺度が悪化するということはなかった。実際に、調べた程度の体重差の範囲内では、体重が重ければL1ーL4の椎間板にわずかながら有益な影響を及ぼす可能性がある」。

これらの結果から、「より大きな生体力学的力は、生理的範囲内であっても椎間板に対し有害である、とする一般的な見解とは矛盾するエビデンスが得られた」とvideman博士らは発表研究の中で説明した。


Videman博士らは発表研究の中で説明した。

スポーツ医学の見解が正しいように思われる

それでは、Videman博士が職業医学分野とスポーツ医学分野から得た相反するメッセージのどちらが正しいのであろうか?

スポーツ医学の立場からの見解が正しいようである。Videman博士はNASS学会で「重要なことは、負荷への適応に関して椎間板が筋骨格系における例外的存在ではないということである」 と述べている。

言いかえれば、関節、骨、筋肉、腱、および靭帯と同様に椎間板にとっても、身体的負荷の増大および段階的適応は有益である。

「この研究は予防的介入と治療的介入にとって、また患者教育にとって意味を有する」 とVideman博士は結論づけた。


by junk_2004jp | 2010-12-04 23:31 | BACKLETTER


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