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心療整形外科

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2011年 12月 06日

慢性腰痛によって失われた脳組織の回復は可能か?

慢性腰痛によって失われた脳組織の回復は可能か?

Is It Possible to Regain Brain Tissue Lost to Chronic Back Pain?

慢性疼痛が長期的に脳組織の損失をもたらす可能性は、複数の研究において示されており、慢性疼痛が脳に長期的かつ破壞的影響を及ぼすとする見解がある。この現象を、疼痛が脳を“たたきのめす(batter)”という一風変わった言葉を用いて表現する人もいる。

脳の早期老化?

Vanna Apkarian博士(Northwestern University) らは、2004年に慢性腰痛患者は疼痛のない対照被験者と比較して灰白質が5~11%少ないことを示す研究を発表し、大変評判になった(Apkarian el al.,2004を参照)。

博士らの報告によれば「この減少量は正常な老化による灰白質の減少量の10~20年分に相当する」。

この問題は、オーランドで開催された北米脊椎学会年次総会における疼痛発生部位の進展に関するシンポジウムで再び取り上げられた(Standaerteta1.,2010を参照)。

あるボストンの脊椎外科医はApkarian博士に、慢性疼痛に関連した脳実質の損失は永続的なものかと質問した。

「もし、灰白質の損失と脳機能の再編成が起きるなら、それは神経変性疾患で、しかも可逆性なのか?」

脳の損失の一部は可逆性かもしれない

Apkarian博士の答えは「実際のところそれに対する回答を持ち合わせていない」というものであった。「脳の損失の少なくとも一部は可逆性であることがいくつかの新規研究で示唆されている。また、疼痛が劇的に軽減すると局所的な灰白質の密度が回復することを示した2つの研究がある。したがって、脳の損失の一部は明らかに可逆性である」と博士は説明した。

そして、神経科学者である同博士は「一方で我々は、おそらく複数のメカニズムが存在し、その一部は他のものよりも可逆性が高い可能性があると考えている。しかし実際、これについてはもっと多くの研究が必要である」と付け加えた。

手術前後での股関節痛患者

最近発表されたある研究では、重症の一側性股関節痛を有する患者群において、股関節置換術前後で脳の灰白質の量が調べられた。手術前に股関節痛患者の脳を健康な対照被験者の脳と比較した結果、前者に灰白質の有意な損失が認められた。しかし、股関節置換術から9カ月後には、灰白質の量は股関節痛患者と対照被験者で等しかった(Gwilymetal.,2010を参照)。

しかし、 Current Rheumatotogy Reports誌に掲載された最近の論評は、 Apkarian博士のこの分野の更なる研究が必要だという主張をより強調している。論評は、 この分野のエビデンスの大部分は横断的研究に基づくもので、 そうした研究は解釈が難しいと指摘した。脳にみられる変化が慢性疼痛の発現前に生じていたのか、 発現後に生じたのかは完全には明らかになっていない(Wood,2010を参照)。

急性腰痛患者の縦断的研究

Apkarian博士は、 自身の研究グループでは米国立衛生研究所の助成を受けたプロスペクテイプ研究によってこの問題を検討していると述べた。

「我々は、 募集した急性腰痛患者を数年にわたり追跡調査し、脳のパラメータを用いて (疼痛と脳の形態学的変化の) どちらが最初に生じるかを明らかにしようとしている。 どのパラメータが疾患の予測因子となり、 どのパラメータが疾患の影響を反映するのか? この研究はこれまで2年間行われてきた。最終的には、 脳内で起きる一連の事象について何らかのヒントくらいは得られるだろう」 と博士は付け加えた。

脳の損失が疼痛以外の因子と関連する可能性はあるか?

灰白質の損失の一部は、 疼痛以外の因子に関連する可能性があると指摘する研究者もいる。 うつ病、 不安、 および他の精神疾患といった疼痛と併存する病態の一部が脳組織の破壊を引き起こす可能性がある。

例えば最近の研究で、 線維筋痛症の患者は対照被験者よりも灰白質の量が少ないという結果が得られた。 当然、 灰白質の損失は慢性疼痛の結果だと考えたくなる。 しかし、 精神疾患の存在について調整すると、線維筋痛症の患者と対照被験者との脳実質量の差はみられなくなった。 すなわち、 少なくともこれらの患者では、 脳容積の損失は疼痛に対する直接の反応ではなかった可能性がある (Hsu etal.,2009を参照)。


参考文献:

Apkarian VA et al.,Chronic back pain is associated with decreased prefrontal cortex and thalamic gray matter density,Journal of Neuroscience,2004;24(46):10410-5.

Gwilym SE et al.,Thalamic atrophy associated with painfu1osteoanhritisof the hip is
reversible after arthroplasty:A longitudinal voxel-based morphometric study,Arthritis
and Rheumatism,2010:62(10):2930-40.

Hsu MC et al..No consistent difference in gray matter volume between individuals with
fibromyalgia and age-matched healthy subjects u.hen controlling for affective disor-
der.Pain.2009:143(3):262-7.

Standaert CJ el at..S、mposium:The Evolution of the Pain Generator: Implications for
Practice,presenled at the annual meeting of the North American Spine Society,Orlan-
do,2010:unpublished.

Wood PB. Variations in brain gray matter associated with chronic pain, Current
Rheumatology Reports,2010;12(6):462-9.

TheBackLetter2612):l8.2011

by junk_2004jp | 2011-12-06 20:15 | BACKLETTER


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