2014年 08月 24日
![]() はじめに この本を手にとられているのは、腰、ひざ、肩、首の慢性痛に悩まされている方だと思います。なかには、病院で手術をすすめられた方もいるのではないでしょうか。 腰痛であれば腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、ひざ痛なら変形性膝関節症、肩や首の痛みは頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症と診断されると、手術をすすめられることが多いようです。 これらの病気は骨などの変形によって神経が圧迫されて起こるといわれています。したがって、神経の圧迫をとりのぞけば痛みは消えるという理屈です。 ところが手術をしても、痛みが消えないことが多いのです。そうしたケースを耳にして、手術をためらう人も多いのではないかと思います。大きなリスクをともなう手術をしたのに治らなかったら、なんのために手術をしたのかわかりません。 こんなことが頻繁に起こるのは、これまでの診断や治療が間違っていたからです。痛みの原因は骨などの変形によるものではありません。そのほとんどは筋肉に原因があるのです。日本ではまだよく知られていませんが、筋肉が原因で痛みを引き起こす「筋筋膜性疼痛症候群(MPS)」という病気があります。 私の病院には他院で手術をすすめられたという患者さんがたくさんいらっしゃいます。そこで私が診察してみると、そのほとんどが手術の必要のないMPSでした。 MPSの多くは「トリガーポイントブロック」という治療で治すことができます。「トリガー」とは「引き金」という意味です。腰、ひざ、肩、首の慢性痛を訴える人の筋肉にはトリガーポイントが見つかります。このトリガーポイントに麻酔注射をして、緊張した筋肉をゆるめれば痛みがとれていくのです。 そのメカニズムは本書で詳しく述べていきますが、比較的軽症の痛みであれば、トリガーポイントは自分でストレッチしたり、身近にある道具を使って筒単にほぐすこともできます。この方法を「トリガーポイントほぐし」と命名しました。 トリガーポイントは誰にでも見つかります。腰、ひざ、肩、首の慢性痛に悩まされている人は、まず「トリガーポイントほぐし」を試してみて、その効果を実感してください。 -------------------------------- あとがき 慢性痛をもっている人は、日本に2000万人ぐらいいるといわれています。 痛みは、私たちの体に危害を加える外力(原因)の存在に気づき、それから逃避するためにあるものですが、痛みがさらに次の痛みをつくるという悪循環を生みます。 このうち急性痛は「痛み」と「組織損傷」が複合したものであり、痛みと組織損傷はそれぞれ別々に治療すべきです。とくに、痛みは時間がたてばたつほど悪化することがあるので、早期からの治療が必要になります。 一方、慢性痛は中枢神経が過敏になって起きているもので、痛みそのものが治療の対象となります。 そして、「神経が圧迫されると痛みやしびれが生じる」「老化した椎間板や関節軟骨は痛みの原因になる」「かたちが正常でないと痛みの原因になる」「損傷を治すと痛みも治る」—これらは生理学的な根拠がなく、単なる思い込みです。 リウマチ、痛風、悪性腫瘍、感染症などをのぞいて、からだの痛みの多くは筋痛です。この筋痛が慢性化しやすいのです。筋痛はもっともありふれたものですが、意外と知られていません。日本の医学教育では、この筋痛がすっぽりと抜け落ちています。 痛みの生理学は急速に発展しましたが、それが臨床に反映されることはなく、いまだに従来の伝統的な考えのまま治療が行われています。それも専門医のレベルにおいてさえです。無駄な検査、無駄な治療が繰り返されることは大きな損失でしょう。 「手術は完全に成功しました。なぜ痛みが続くのかわかりません」有名大学病院で脊柱管狭窄の手術をした方がこうおっしやいました。 この時点で、そもそも痛みの原因が間違っていたことに気づくべきなのです。痛みに悩む人は、私が医師になった40年前より増えているように感じます。これは、MRI、CT、内視鏡などが発達し、医師数も増えて、保険診療で簡単に検査できるようになり、ムダな治療機会を増やしていることが一因ではないでしょうか。 医師が今のような診断を変えないかぎりは、患者さん自身が勉強して対策をとるべきでしょう。 加茂整形外科医院院長 加茂淳
by junk_2004jp
| 2014-08-24 23:16
| MPS
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