2015年 04月 26日
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201504/541719.html 症候性の腰部脊柱管狭窄症(LSS)患者をランダムに外科的減圧術群と6週間の理学療法群に割り付け、2年後の身体機能を比較した臨床試験で、両群に有意差がないことが明らかになった。両群とも、2年後に身体機能が同程度に回復しており、効果に男女差は見られなかったという。米Pittsburgh大学のAnthony Delitto氏らが、Annals of Internal Medicine誌2015年4月7日号に報告した。 腰と脚の疼痛を含む重症の症状が持続するLSS患者の選択肢の一つは、外科的減圧術だ。米国では、腰部の手術を受ける原因として最も多いのがLSSとなっている。しかし、非外科的治療についてはエビデンスがほとんど無いため、選択は難しかった。これまでにも外科的治療と非外科的治療を比較する臨床試験が行われたが、質の高い研究はなかった。 著者らは、外科的な減圧術と標準化された理学療法の有効性と安全性を比較し、それらの治療の影響に性差があるかどうかについて検討する多施設ランダム化試験を実施した。2000年11月から2005年10月まで患者を登録し、神経外科・整形外科部門と理学療法クリニックで試験を実施。追跡は2007年9月まで行った。 試験の対象は、CTまたはMRIによってLSSが確認され、神経性間欠跛行を呈し、外科的な治療が適用でき、減圧術歴が無く、手術または週2回の理学療法にランダムに割り付けられることに同意した50歳以上のLSS患者169人。87人を減圧術群、82人を理学療法群に割り付け、24カ月追跡した。2年時点のSF36の身体機能スコア(0-100点の範囲で高値ほど良好)を、主要評価項目に設定した。患者が希望する場合は、割り付け外群へのクロスオーバーを認めた。 理学療法群には、週2回、6週間のセッションを提供した。理学療法士が、全身運動に加えて、腰椎の屈曲および下肢の柔軟性の向上と強化に焦点を当てた運動を指導し、姿勢などに関する教育も行った。患者には、減圧術群へのクロスオーバーが随時可能であることを説明した。 24カ月の追跡を完了したのは、減圧術群の74人と理学療法群の73人。減圧術群の2人は手術を受けずに、割り付けから10週以内に理学療法にクロスオーバーしていた。一方、理学療法群では、2年間に47人(57%)が手術にクロスオーバーしていた。それらのうちの31人(66%)は、割り付けから10週未満で手術を受けていた。 その結果、Intention-to-treat分析では、2年後SF36スコアが、試験登録時(ベースライン)を基準にすると両群とも同程度に改善していることが判明。スコアの改善幅は、減圧術群が平均22.4点(95%信頼区間16.9-27.9)、理学療法群が平均19.2点(13.6-24.8)で、差は0.85ポイント(-7.9から9.6)と有意な値にならなかった。 理学療法群から減圧術群へのクロスオーバーが57%と多かったことから、感度解析では因果効果の推定を行ったが、結果は変化しなかった。 治療の効果に男女差があるかどうかも調べたが、有意差は見られなかった。 減圧術関連の合併症は33件発生し、11件は理学療法から手術にクロスオーバーした患者だった。最も多かったのは再手術で、そこには創傷治癒の遅れや手術部位の感染症が含まれていた。理学療法関連の有害事象は9件で、全てが症状の悪化だった。試験期間中に6人(減圧術群4人、理学療法群2人)が死亡したが、死因は全て試験への参加とは無関係だった。 著者らは今回の試験結果について、「LSS患者に対する外科的減圧術と理学療法が、割り付けから2年後の身体機能にもたらす利益には差は無かった。手術と理学療法に関するエビデンスに基づく治療選択を行うために、患者と医療従事者は、既知の情報に今回の情報も加えて、話し合いを行う必要がある」と総括している。 原題は「Surgery Versus Nonsurgical Treatment of Lumbar Spinal Stenosis: A Randomized Trial」、概要は、Ann Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。
by junk_2004jp
| 2015-04-26 01:20
| ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾
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