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心療整形外科

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2016年 06月 24日

筋膜リリース(筋膜はがし)に対する考察

整形外科医は最も生身の筋膜(ファスチア、ファシア)切ったり、剥がしたり、縫い合わせたりしている職種です。

皮下腫瘍摘出、腱断裂の縫合、鎖骨、足首、膝蓋骨、手首などの骨折の手術などを局所麻酔でやっていることがあります。

だからどこに痛みのセンサー(ポリモーダル受容器)がたくさんあるか経験的に知っています。

ほとんどは表皮、真皮にあります。

たとえば鶏卵大の皮下腫瘍(粉瘤腫、脂肪腫)の摘出の場合

切開する表皮、真皮の部分に局所麻酔を打つだけでほとんどの場合十分です。

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真皮のすぐ下に良性腫瘍が脂肪組織の中にあります。脂肪組織は痛みを感じることはありません。

腫瘍の表面に沿って鈍的に剥がすようにして(鋭利な刃物を使わず)神経や血管を傷つけることを防ぎます。

腫瘍の底が筋膜にまで達していることがあります。

筋膜に癒着していることはなく、鈍的に剥離できます。(鋭利な刃物は必要ありません。)

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このような筋膜がみえます。この筋膜がよじれている、シワになっている、癒着しているというようなことは信じられないのです。もしなっていたとしてもそれが原因で痛みが生じているとは信じられません。

悪性腫瘍になると、筋膜や筋肉まで腫瘍細胞が浸潤していることでしょう。


骨折の手術の場合

この骨膜だけを下の筋肉を傷つけないように切り開きます。このとき痛みを訴えることはほとんどありません。

筋膜を切開したら筋肉がみえます。

筋肉をメスで切ることはなるべく避けるようにします。

筋束の分入りやすいところを鈍的に剥がして骨に達し骨折の固定をします。

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筋肉の骨側の筋膜ですが、気になったことはありません。

骨を接合したら筋膜を細い糸で縫い合わせます。

あとは真皮、表皮をまとめて縫い合わせて終了。

表皮、真皮の局所麻酔だけでこのような治療が可能です。

整形外科医が「筋膜の癒着」という言葉で想像するのは・・・

手術痕の部分で、あるいは小児の臀部や大腿部の予防注射痕(一時問題になりましたね)で真皮、脂肪組織、筋膜が癒着した状態を想像します。

マッサージで改善しません。生食を注入しても剥離できません。メスで切り離す。また癒着する。

癒着していると二次的な弊害が出てくるかもしれませんが、癒着があるから痛いというわけではありません。

このように整形外科医にとって「筋膜リリース」「筋膜はがし」ということばを理解し難いのです。

彼らのいう筋膜と整形外科医のいう筋膜は同じものなのか。

彼らのいうリリースとはどういう意味なのか。

このように言葉だけが有名になると、素人やマスコミはとび付きますが、十分に考察すべきことです。

慢性の痛みは心理・社会的疼痛症候群と言われています。

中枢性の痛覚過敏症が本態で認知行動療法は欠かせない。

それと筋膜リリースはどう位置付ければいいのか。

鍼灸師など痛みの治療家は鍛えられた指先の感覚を頼りにして、響く痛点をさぐって、鍼を打ってください。

その時、患者さんの脳の状態(不安、抑うつ)をさぐり支える言葉を用意してください。

日本人のもつ手の器用さ、他人を思いやる気持ち、支え合う気持ちはきっといい結果をもたらします。

医師がレントゲンやMRIで失敗したことを鍼灸師もしないように。

低周波エコーは腱断裂、肉離れなどの外傷の判断には有効ですが、痛みの部位を探るのには疑問です。

痛みを感じると反射的(脊髄反射、逃避反射)で筋肉の緊張が起きます。

これはもちろん運動神経を介してです。

筋膜に運動神経の終末があるとはおもえません。緊張でもこわばりますね。緊張すると筋膜がこわばる?ちょっと説明は難しいですね。



by junk_2004jp | 2016-06-24 13:40 | MPS


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