人気ブログランキング | 話題のタグを見る

心療整形外科

junk2004.exblog.jp
ブログトップ
2016年 07月 19日

「膜・筋膜」vs「痛みの考え方」

昨日、本屋をぶらぶらしていて偶然「膜・筋膜 Fascia」という本をみつけた。(中2の孫の数学の問題集を買ったのだが)

「膜・筋膜」vs「痛みの考え方」_b0052170_1326255.jpg


1万円と高額なので買うのをためらいじっくり座って読ませてもらった。

筋膜リリースはこの本が元になっているのが分かった。

これは訳本で、著者も訳者も理学療法関係の人だ。

著者のYOU TUBE





Fasciaの定義だが

「筋外膜・筋内膜・筋周膜」


これは私たち整形外科医と同じ。

しかし読み進めていくと

筋膜の最外側部が脂肪層・・・・浅層

皮下脂肪の深部に体幹の軸性筋膜・・・・筋外膜、腱や靭帯を取り巻く膜、骨膜、神経組織を取り巻く髄膜筋膜、内臓を取り巻く内臓筋膜



このへんから私はついていけない。Fasciaをどう訳すか?どう定義するかの問題となる。皮下脂肪をFasciaという整形外科医は日本にはいないと思う。

トリガーポイントの章の「要約と結論」

トリガーポイントの研究は、病因学的、病態生理学的な筋膜の役割と、トリガーポイントの管理について調査する必要があることが明白である。・・・・多くの未解決の問題がまだある。・・・・技術的前進が増すことで、トリガーポイントとそれらの当面の環境を実際に視覚化することが近いうちに可能となるだろう。


運動神経Aα、筋紡錘へいくAγ神経はいずれも筋肉についている。筋肉の伸張、収縮によって筋膜もそれに伴う。筋膜には知覚神経が多くあるものと思う。

筋膜を取り立てて注目する必要はない。過敏になった知覚神経の先端のポリモーダル受容器のあり場所さえわかればいい。

「筋膜リリース」というのは手技療法家の独特な言い回しのようなきがする。別に悪いと言っているのではないが額面通りの意味はないだろう。

「指圧の心は母心、押せば命の泉わく」有名な指圧家の言葉だが、これを検証するのと同じようなものだろう。

「膜・筋膜」vs「痛みの考え方」_b0052170_18115913.jpg


一方、「痛みの考え方」〜しくみ・何を・どう効かす〜 丸山一男著(ペインクリニック学会専門医)

痛みを電気生理学的に説明していて、解りやすいいい本だと思う。

この本には筋膜は全く出てこない。

痛みの記憶は主に脊髄後角のジャンクション部で行われる。

持続的な痛み刺激はNMDA受容体を開口する。

三環系抗うつ薬は「NMDA受容体のCaの流入抑制が推定される。



ただし、P264の「神経圧迫は神経障害を引き起こす」はいかがなものかと思う。

圧迫→血流障害→Schwann細胞が産生するミエリンが変性


・C線維はもともと無髄神経。脱髄性疾患(多発性神経炎、ギランバレーなどは麻痺性疾患)

・体位によって痛みが変わる

・どの部位の痛みでも圧迫があるか検査するのか?

・治療による経過があきらか





by junk_2004jp | 2016-07-19 13:55 | 痛みの生理学


<< 第9回日本運動器疼痛学会      同じ運動、同じ姿勢はコリ、痛み... >>