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心療整形外科

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2019年 07月 28日

悲しき整形外科医

整形外科医の本来の仕事は骨折の修復です。つまり骨大工さん。

そのほか、靱帯や腱の断裂の修復をすることもあります。

人工関節の取り付けも行います。クーラーの取り付け業者さんのようなものでしょうか。

昔はペインクリニックがありませんでしたので、骨大工さんがついでに痛みをみるようになったのです。

痛みは火災報知器のようなものなのです。

火災があれば鳴るのは当然です。

しかし、火災(炎症)が治っても鳴り続けることがあるのです。あるいは、どこにも火の気配がないのに鳴っているのです。

骨大工さんは専門でもない分野で困ってしまいました。大学でもしっかり習っていないのです。

痛みが定義されたのは1986年です。

骨大工さんになろうと思う人はどちらかというと、聴診器、心電図や血液データなんかは向いてない、アウトドア派、スポーツマンタイプの人が多いのではないでしょうか。だから、精神科の医師が文学青年ぽいのと大違いですね。

複雑な思考より手術場での大工仕事のほうが向いている人が多いのではないでしょうか。

大工さんですから、どうしても脊柱、骨に注目してしまいます。

「たぶん、背骨のぐらつきが火災報知器が鳴っている原因だろう」「たぶん軟骨がすり減っているのが原因だろう」「たぶんヘルニアが神経を押しているのが原因だろう」などと骨大工さんの頭で考えたのです。もちろん科学的な裏付けはありません。

そうでも言わなきゃ患者さんに説明できないのです。

「画像で何か異常が見つかってくれ」と思っているでしょう。そうでなきゃ説明できない。

先日次のような患者さんがいました。

⭕️1年前、車の後部座席のものを取ろうと、腕を伸ばしたとき、肩に鋭い痛みがはしる。以来、背に腕を回すのが痛くて困難。

3軒の整形外科を受診、レントゲン、MRIで異常なし。「五十肩です。時期が来ないと治りません」肩板断裂でも見つかればと思ったことでしょう。

私は一箇所だけに強い圧痛がありましたので、そこに2ccの局所麻酔を注射しました。すぐに問題は解決しました。もちろん画像検査は必要ありません。このような治療を1回から数回で治るでしょう。

この事実がもし交通事故など加害者被害者がある場合を考えてみてください。100人の人に同じことをしてもらったが一人もそんなことが起きなかった。

検査をしても異常がみつからない。

そんなことで1年も続くはずがない。

という議論が起こることでしょう。恐いですね。

⭕️3年まえ、旅行から帰ったあとからか、太ももの全面に痛み出現。公立病院で脊柱管狭窄症だが手術するほどではない。

血流改善剤を飲んでいるがよくならない。一度、担当医の交代があったが、同じ見立てでした。

筋痛症しかありえません。いくつかのポイントに局所麻酔を注射したら、すぐに楽になりました。

1W後、「しばらくよかったがまた痛くなった」3年間も放置してたのだから、根気よく治療しなくてはなりませんね。中枢性の痛覚過敏(中枢性感作)になっているのです。

「悲しき整形外科医」ですね。

ケガ・・・整形外科医
痛み・・・ペイン医
不安・慢性化・・・心療内科医

骨折や捻挫をしたら、この3人の医師が必要なのです。現実的にはそんなわけにいかないですね。整形外科医が一人でこなせばいいのです。なにも難しいことではありません。



by junk_2004jp | 2019-07-28 00:31


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