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心療整形外科

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2025年 06月 24日

先生は変形性膝関節症を全否定なの?

Osteoarthrosis (骨関節症が直訳)これを変形性関節症と訳したのです。あまり良い訳だとは思いません。

存在は認めます。しかしその原因が軟骨がすり減っているからではありません。
grade3,4でも痛みのない人は半数ほどいます。原因ではなく結果なんですね。

別の検査では

「2000人の検査でレントゲンで変形性ーと認められたのは男性54%、女性75%だった。このうち痛みのある人は男性の2~3割、女性の4割にとどまった。」とあります。

これだけで軟骨のすり減りが痛みの原因ではないことがわかります。

痛みの原因は、(関節リウマチ、痛風、偽痛風をのぞく)外力なんです。これは膝だけに限ったことではありません。

①打撲、捻挫などケガ(この場合は組織に損傷が生じているかもしれません。損傷が生じていれば損傷の治療と痛みの治療は別問題として取り扱うべき。)
②繰り返し動作、固まった姿勢
③筋肉の攣り(寝違い、ぎっくり腰など)
④心理・社会的問題(ストレス)

痛みのセンサーは構造破綻に反応しません。外力によるケガに反応しているのです。

痛みは悪循環します。

痛みを感じると防御するために反射的に、筋肉の緊張が生じます。それがまた次の痛みと悪循環するのです。以前は交感神経の緊張も関係しているといわれていましたが(RSD)必ずしもそうではないので慢性化した状態をCRPSタイプ1というようになりました。

急性痛=組織損傷+筋痛(損傷の程度はピンキリです。小さいものだったら安静はかえって悪影響
慢性痛=筋痛(組織損傷は治癒したのです)

慢性の膝痛を何人もみていますが、O脚、内また歩行、膝が伸びきらない。このような高齢の女性に多いです。

膝窩筋、内側広筋、縫工筋、半腱様筋が凝っていることが多いです。凝ってガチガチになって短縮しています。そのため、関節のかみ合わせに無理が生じ軟骨が摩耗するのでしょう。

西洋人は歩き方が上手のように思います。若いうちに歩き方や座り方に気を付けて。

痛みは「不快な感覚的、情動的体験」と定義されています。脳の健康状態が痛みに大いに関係します。身体表現性障害、身体化障害、疼痛性障害、病気不安症、などとという病名があります。案外、こういうことかもしれませんね。

「失礼なお医者さんね、精密検査したら、半月板がボロボロになっていて痛かったのがわかりました」「軟骨が欠損していました」このような評判されるのはいやなものです。痛みのセンサーがこのような状態に反応しません。


症例1
70歳代男性、1ヵ月ほど前、椅子から立ち上がろうとしたとき、膝に痛みが走った。立ちすわりや階段時に痛む。レントゲンで「軟骨の老化で、気を付けて生活することです」老化なら仕方ないとあきらめていました。私のことを聞き受診。

内側広筋に2か所圧痛があり、そこに計4㎖の局所麻酔を注射したら、その場で痛みがなくなりました。③の筋肉の攣りだと思います。ぎっくり膝とでも言いましょうか。動作のタイミングが悪かったのでしょう。

「膝って急に老化するんですねw。その前は全然痛くなかったのですよ。」と皮肉をいってあげてください。おおくの医師の欠点は触診をしないで画像診断をすることです。

症例2

70歳代、女性「3年前、膝痛で、医師から、もう正座はできないでしょう。」と言われていた女性が当院を受診して「正座もできるようになりました。膝痛も全くなくなり、有難うございました。」私は全く記憶にありません。「それはよかったですね。で、今回は?」「先日、旅行に行きたくさん歩きました。そしたら、その翌日から、また痛くなりました。」

原因は②か③でしょう。遅発性筋痛といって、1~2日後に痛みが出ることが多い。圧痛点を調べて注射、膝の曲げ伸ばしを10回、お風呂の後にマッサージ。成功体験があるので、説明はスムーズにできます。

症例3

ヒアルロン酸を定期的に打っていたがよくならない。軟骨再生医療を受けようと決心し受診するもあまりに高額なので決心がつかない。人に聞いて当院を受診。数回の治療でとても回復した。この方、骨粗鬆症の治療もしているので、元の主治医のところに通院、「そんな治療を受けていたら、軟骨がボロボロになる」といわれた。

私は最近、骨折が疑われる場合や偽痛風(カルシウム結晶沈着)が疑われる場合以外はレントゲンを撮りません。MRIはありませんし。

身体表現性障害を疑われるときも、(演技ではない、大げさな、不釣り合いな痛み行動、治療に反応しないなど)万が一を考えて、患者さんに納得してもらう意味でレントゲンを撮ります。

若いお医者さんで、レントゲン、MRIなど重装備の場合は大変です。「詳しく検査しましたが、年齢相応の変化が見られますが、これは痛みの原因ではありません。特に心配な病変も見当たりません。」これぐらいの説明がいい。

ときには「立派な膝です、平均よりうんといいですよ。」これだけでよくなるかもしれないのです。先日、プラシーボ手術でも効果は変わらないという報告がありましたね。

痛みの医学

失敗だった「損傷モデル」→「生物・心理・社会的モデル」「筋痛症モデル」へ



by junk_2004jp | 2025-06-24 02:18 | 慢性痛


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