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心療整形外科

junk2004.exblog.jp
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2006年 08月 22日

神経根ブロックの電撃痛について

2chで

「椎間板が飛び出して神経を圧迫することが、痛みの原因とはならない」 「痛みは末梢神経のポリモーダル受容体で感知するのだ」 という医者もいる。 では、神経根ブロック/硬膜外ブロック注射で激痛が走のは、なぜだろう?
という質問があったのでここでお答えします。

まずは生理学の勉強から、

http://www.isis.ne.jp/i/467/3.html

電気の発生現場は、細胞である。そもそも細胞膜の内と外でいつも100ミリボルトの電位差がおこっている。この状態を「分極」といい、細胞の内側のほうが低いマイナス電位になっているのだが、何らかの刺激をうけるとプラス電位に反転する。「脱分極」という。この脱分極こそが人体のさまざまな"神秘"をうけもっている。

もともと細胞の内外は電解液で満たされている。そこはふだんはナトリウムイオンとカリウムイオンによって濃度平衡を保っているのだが、外から何かの刺激が加わると、細胞膜の透過特性に変化がおこってナトリウムイオンが突発的に内側に向かって流れていく。突進する。これが生物学でよくいう「細胞が興奮した」という現象にあたるのだが、実際には「細胞膜が興奮した」のであって、それはナトリウムとカリウムのイオン相互に濃度の変化がおこったということだった。

このとき、ナトリウムイオンはプラスの電荷をもっているので、それが細胞内に流れこみ、内側の電位はプラス20ミリボルトほど上昇する。この脱分極は0.3秒ほど続く。この時間が重要で、その持続を保つために電解液に溶けこんでいたカルシウムイオンが一斉にがんばって内部に移動して、内側のプラス状態を維持するように動くのである。かくてこのあと、カリウムイオンがあらためて外側に移動して、細胞膜はふたたび分極状態に戻る。

つまり、われわれの人体の電気を作ったり運んだりしているのは ナトリウムやカリウムやカルシウムのイオンなのである。われわれはイオンという電気に満たされた電気システムなのである。これに対して、世の中の電気製品のすべては電子によって動いている。

われわれの身体は電気仕掛なのだ。

http://www.kdcnet.ac.jp/seiri/lect/action.htm
この動画も参考にしてください。

神経根ブロックの電撃痛について_b0052170_19444538.jpg
横田敏勝著「臨床医のための痛みのメカニズム」より

ブラジキニンがブラジキニン受容体に作用するとNaチャンネルが開きNaが細胞外から細胞内へ流入する。(脱分極)→電流が生じる。

これが痛みの電気信号が生じるメカニズムです。

神経根ブロックは神経に針を刺すのですから、そのところでNaの流入がおこり脱分極するのでしょう。そこで生じた電流は脳に到達し、脳では下肢に痛みが放散したように判断する。

硬膜外ブロックでは神経の細胞膜を傷つけることはないのでこのような電撃痛はない。太い注射針なので局麻をしないですれば、機械的刺激(Aδ繊維=早い痛み)を強く感じるのだろう。

神経線維(電線)を圧迫しても電流は生じないのはあきらかです。ヘルニアが神経を圧迫して痛みが生じるというのなら、どのようにして脱分極が生じるのか説明しなければならないのだが。

局所麻酔を注射すると一時的にNaチャンネルがふさがれて脱分極しません。
神経根ブロックの電撃痛について_b0052170_206359.jpg
「図解局所麻酔法マニュアル」江南堂より

by junk_2004jp | 2006-08-22 19:06 | ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾


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