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心療整形外科

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2006年 09月 29日

リウマチ専門医単位認定演題:高齢者の腰下肢痛 -診断のポイントとプライマリーケア-より③

腰部脊柱管狭窄症
1949年、Verbiest、日本では1970年代
高齢者の下肢の痛み・しびれを生じる代表的疾患。
狭窄があっても無症状例が存在する。
無症状例における画像異常
・脊髄造影検査:24%に造影欠損(Hiselberger,1968)
・MRI:60歳以上では21%に脊椎狭窄、35%に椎間板ヘルニア(Boden,1990)

高齢者では4~5人に1人ぐらいの割合で脊柱管狭窄を有している可能性がある。

画像診断の注意点
・狭窄があっても無症状例が存在する
・狭窄の程度と症状は関連しない
・動的に狭窄の程度は変化する

画像だけでは診断できない。

腰部脊柱管狭窄症の症状(病型)分類 (菊地、蓮江)
・神経根型:下肢痛(主に片側)
・馬尾型:両下肢のしびれ・脱力(痛みなし)
・混合型(両者が合併したもの)

神経性間欠跛行の病態
・圧迫による馬尾、神経根の血流障害
・狭窄があるだけでは症状は出現しない

腰部脊柱管狭窄症の自然経過(自覚症状)
  7~8割は軽快ないし不変、2~3割が悪化(必ずしも進行性疾患ではない)
・Johnsson、1992(4年):軽減15%、症状不変70%、悪化15%
・林、2001(5年以上):軽減19%、症状不変61%、悪化20%
・吉田、2003(平均11年):軽減38%、症状不変31%、悪化31%

腰部脊柱管狭窄症の病型と予後
・神経根型=下肢痛・・・・予後:軽快傾向(保存的治療が有効)
・馬尾型=両下肢のしびれ・脱力、排尿障害・・・・予後:進行性(手術が必要)


歩行で出現する下肢の痛み・しびれは神経からの警告である。
無理をすると、さらに悪くなる可能性高い。
「痛みが出現しない歩き方で、痛みが出てきたらすぐ休む。」
症状が出にくい歩行:前屈位、歩幅を小さく、ゆっくり歩く
高齢者では無症状でも腰部脊柱管狭窄を有している可能性があり、運動療法により症状が誘発される場合もありうるので、注意が必要である。

保存療法
・物理治療:低周波電気刺激、温熱療法など
・神経ブロック:トリガーポイント、仙骨硬膜外ブロック、神経根ブロック


手術治療のポイント
・馬尾障害は手術適応となるー安静時のしびれ出現が時期の目安
・間欠跛行は除圧により軽快するー跛行がなくなるとQOLは向上する
・手術侵襲は大きくないー高齢だからとあきらめる必要はない


by junk_2004jp | 2006-09-29 22:16 | 慢性痛


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