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心療整形外科

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2007年 12月 04日

構造的異常を痛みの原因にしない②

無症状膝のMRIにおける異常所見の発生頻度
無症状膝のMRIから、加齢に伴う半月板の変性と変形性膝関節症との関連および円板状半月板の頻度を検討した。対象は膝に外傷の既往がなく、症状のない健常人115名であり、年齢は13-76歳であった。半月板の変性は加齢とともに増加し、内側半月板の後節部で最も著明であった。内側半月板の後節部では全体の18.3%、60歳以上では41.7%に断裂を示す
grade3を認めた。円板状半月板は15膝にみられ、すべて外側であった。円板状半月板は広い年齢層にみられ、その頻度は13%であった。年齢に伴う半月板の変性の増加は他の欧米の報告と同様であったが、軟骨下骨異常の頻度は著明に高かった。その原因として日本人の生活様式や遺伝的要素が考えられる。本研究により、健常日本人における膝関節MRIの異常出現頻度が明らかとなり、有症状の患者を治療するにあたり有用な情報となる。(J Orthop Sci 掲載論文要旨    日整会誌76 )
 

無症候性肩における腱板完全断裂の頻度ー肩関節造影による検討ー
全125肩のうち腱板完全断裂を認めたものは44肩,35.2%であった。各年齢別の腱板断裂の頻度は50歳以下では20肩中O肩。51-55歳では12肩中3肩(25%)。56-60歳では19肩中5肩(26.3%),61-65歳では23肩中9肩(39.1%),66-70歳では20肩中11肩(55%),71-75歳では19肩中9肩(47.4%)。76歳以上では12肩中7肩(58.3%).であった。患側が腱板完全断裂の70肩中,無症候側に腱板完全断裂があるものが42肩(60%),また無症候側に腱板完全断裂のある44肩では,その患側に腱板完全断裂を右するものが42肩(95.5%)であった。(日本整形外科学会雑誌第78巻第4号)
 

MRIによる健常者の年齢別異常検出率
     Boden S.D.et al(J Bone Joint Surg Am 1990)

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半月板の手術のあと膝痛が続いている人をしばしば見かけます。それは関節鏡を使った半月板の手術を得意とする病院があるからでしょう。半月板が悪いから膝痛があるという理論はなりたちません。痛みのない膝でも半月板が損傷している膝はよくあることです。

半月板が損傷しているので痛いというのは感覚的な話なのです。ではなぜ、どこのポリモーダル侵害受容器が活性化しているのかという生理学的に詰めた議論になるとお手上げになってしまいます。半月板には侵害受容器はありません。

術後痛みが続いている人のほとんどが、内側広筋に圧痛点がありこわばっています。時に外側広筋にもみられます。
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痛みの本態はこれらの筋肉の筋筋膜性疼痛症候群だとおもいます。筋肉に対してトリガーポイントブロックやマッサージ、電気治療、ストレッチをしてやれば症状は改善します。

筋痛→筋短縮→膝アライメントの変化→半月板の障害、このように半月板の障害は痛みの原因というよりは、結果とみたほうが理にかなっているのかもしれません。

同じことが関節軟骨にも言えます。軟骨には侵害受容器はありません。軟骨が傷んでいても痛くない人はいくらでもいます。筋痛→筋短縮→膝アライメントの変化(0脚)→軟骨障害、とも考えられます。

医師から構造的な異常(半月板、軟骨)が痛みの原因だと告げられれば、「無理はできない」「構造を治さない限り痛みは治らない」と思うものです。安静にするから筋肉のこわばりはますます強くなっていく可能性があります。

「筋肉のこわばりが原因で痛いのです。」と告げられることにより、治療の意欲、安静の排除など良循環が起きて痛みは軽減していくものです。

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棘上筋の筋痛、短縮によって上腕骨が引きつけられて上肢を挙げるときに肩峰に衝突するようになり、次第に断裂するのかもしれません。

断裂したら筋力の低下や可動域の制限がおきるかもしれません。たぶん他の筋肉が代償的に働きその影響は少ないでしょう。特に高齢者の日常生活においては。

筋腱が断裂していてもそれが痛みの原因になることはありません。わざわざ筋腱を離断する手術をすることもあります。

腱板断裂も痛みの原因ではなくて、結果と考えたほうがスジが通ります。

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踵骨棘も痛みの原因ではなくて結果だと考えるべきです。足底筋の緊張が続き、筋腱付着部が微小損傷がおきてその修復として骨化したのです。骨棘があるから痛いのだというなら、踵骨そのものも大きな棘に見えてきませんか。

健常人にもしばしばヘルニアがみられるというのはよく知られたことです。ヘルニアが痛みの原因でない一つの物証になります。

椎間板は血管がありませんのでその栄養はスポンジが水を吸うたり出したりするようなシステムで行われています。よく動かすほうが椎間板にとってはよいことなのです。椎間板が老化のために亀裂が生じて、髄核がその亀裂に沿って飛び出した状態がヘルニアといわれています。

大きな外力が一過性に加わったとき、ヘルニアが生じたのと同時に筋肉の微小損傷も生じるでしょう。このとき、ヘルニアが原因で痛みが生じてきていると考えるのではなくて、筋痛が痛みの原因と考えるべきです。

●一過性の大きな外力→①構造の損傷(ヘルニア)
               ②筋肉の微小損傷、スパズム→痛みの悪循環
①と②が同時に起こり、画像で分かるのは①なのです。しかし痛みの本当の原因は②なのです。同じことは椎体の圧迫骨折に対してもいえます。

●日常生活の癖が原因でいつのまにかヘルニアが生じる
ヘルニアがあっても痛くない人は筋痛(スパズム)が起きていないのです。ヘルニアのサイドと痛みのサイドが有意に一致する率が高いのであれば、体の歪みの癖(筋肉の短縮、痛みを避ける体位)と関係している可能性があります。


このあたりは研究してみるべきです。手技療法家のご意見は?

by junk_2004jp | 2007-12-04 02:41 | 痛みの生理学


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