2008年 10月 02日
◆慢性痛を訴える患者は急性痛とは異なる病態である。 ◆慢性痛とは「組織損傷が通常治癒するのに必要な期間を超えて訴え続けられる痛み」である。 ◆慢性痛は急性痛の治癒過程で何らかの疼痛シグナル伝達機構に変性が生じた結果である。 ◆末梢神経線維、脊髄後根神経節、脊髄後角二ユ一口ンの複数における可塑性変化が慢性痛の発症因子である。 (線維筋痛症ハンドブックより) 慢性痛の疼痛伝達経路は急性痛と同じでも、その伝達経路が可塑的変化が生じてしまっている。 慢性痛には、急性痛に対する治療法が応用されるものの、根本的に異なる病態なので、多くは難治性である。それを反映する保険病名がない。椎間板ヘルニアだの腰椎すべり症だのは病名というより画像所見なのだ。それと患者さんが訴えている痛みとの間に関係がないということなのだ。 だから、「急性腰部痛」とか「慢性腰部痛」という病名のほうがまだよいわけだ。 慢性痛症という神経回路の病気なのだ。痛みの生理学者はそういっている。 「@@の慢性痛症」という病名でよいわけだ。神経回路の病変が画像診断できるはずがないのだ。だから、画像診断は特異的疾患(特殊な病理を示す疾患=悪性腫瘍、感染症、膠原病(脊椎関節炎)、骨折など明らかな損傷)の有無を調べるものなのだ。 慢性痛症が現れる舞台となるのは侵害受容器のある場所、つまり筋肉か滑膜なのだ。 だから、慢性痛症=慢性筋痛症。 どれぐらいの期間で慢性痛に移行するかであるが、1ヶ月~6ヶ月といろいろな記載がある。激しい急性痛の場合は2週間ほどで慢性痛に移行するらしい。 急性痛と慢性痛は芋虫と蝶のようなものだ。まるで別の生物のようだ。芋虫は捕まえやすいが蝶に成長してしまうとつかまえにくくなってしまう。 このような概念は私が医師になったころにはなかった。最近の痛みの生理学の進歩の成果だ。 ワインドアップ現象とは、痛覚神経C線維に連続して刺激を与えていると次第に痛みを強く感じるようになること。 中枢性感作(central sensitization)とは痛みが長く続くと中枢性の痛覚過敏状態となることで、神経系の可塑性変化(神経系が歪む)。 できるだけ早く痛みを取ることが重要だということが分かってきたのだが、未だに構造異常が痛みの原因だと説明するのは間違っていると思う。 構造の治療と痛みの治療は別物なんだ。骨折の治療と痛みの治療は同時進行でやるべきことなのだ。 骨折は治ったが痛みが続いている。骨折は治らなかったが痛みはない。どちらもあり得ることだ。 構造と痛みをリンクさせるな。 椎間板ヘルニアと痛みは別々のことなんだ。 椎間板ヘルニアの治療といっても手術して取るか自然消滅を待つかだろう。放置しても構わない。痛みの治療をすればよいわけだ。
by junk_2004jp
| 2008-10-02 21:56
| 痛みの生理学
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