心療整形外科

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2018年 01月 21日 ( 1 )


2018年 01月 21日

意見書

あることで起きた痛みに対して裁判の意見書を頼まれた。

一般論

悪性腫瘍、感染症、リウマチ系、痛風系、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛を除けばほとんどの痛みは「筋筋膜性疼痛」だ。

筋筋膜性疼痛症候群の診断基準は1990年にSimonsによってつくられた。

簡単にいうと筋痛症だ。筋痛症のメカニズムが全て解明されているわけではない。

痛みは次のように定義されている。

「不快な感覚性・情動性の体験であり、それには組織損傷を伴うものと、そのような損傷があるように表現されるものがある。」

① 「組織損傷を伴うもの」はいわゆるケガの痛みだ。急性痛、侵害受容性疼痛と言われている。組織損傷の警告としての意味があり、組織損傷の治癒とともに消失する。

② 「そのような損傷があるように表現されるもの」が近年まで謎とされてきた痛みで、慢性痛、神経障害性疼痛、神経痛と言われている。日本のある学者では心因性疼痛ともいっているが世界的な表現ではない。

慢性痛は3ヶ月以上続く痛みで1980年中頃に詳細がわかってきた。強い痛みなら数時間で慢性痛になるといわれている。

3ヶ月は損傷が治癒する期間。損傷の治癒とは損傷の断端が閉鎖した状態で完全に修復を意味するものではない。

急性痛はAδ線維、慢性痛はC線維を通る。互いに交通しているので、急性痛と慢性痛が混在していることもある。

痛みの治療と組織損傷の治療は別のものと考えるべきだ。組織損傷が治癒した後も痛みが続くことがあるのだから。

慢性痛とは中枢性の痛覚過敏状態で痛みそのものが治療の対象となる。

外力(外傷、使いすぎ、長時間の姿勢保持)によって痛みが生じる。

痛みが続くと筋は攣縮して短縮する。

不意の外力が問題になる事が多い。たとえば寝ぼけて椅子から落ちて頭を打つ、むち打ちなど防御体制が取れない時に生じたケガ。

痛みは脳の認知と反応なのだから個人差があるのは当然のことだ。

恐怖や不安は痛みを増強させる。

ストレスは痛みの閾値を低下させる。痛いことが大きなストレスとなる。

ストレスは筋肉の緊張を強める。くいしばりや手の握りしめなど。

1)痛みは悪循環する。

痛みを感じると反射的に筋肉が緊張(脊髄反射)する。慢性の痛みは筋痛だという根拠の一つとなる。

また交感神経も緊張する。これらのことが次の痛みを作る。

2)痛みは広がる(空間的加算)

痛覚神経の先端にあるポリモーダル受容器で電気信号化され、脊髄を通り脳に到達して痛みとして認知する。

従来は神経線維を支持するだけと考えられていたグリア細胞も活性化して周囲の神経に影響をおよぼす。

対側にも及ぶことが知られている。

3)痛みは次第に強くなる(時間的加算)

痛みは慣れることはなく次第に強くなることが知られている。痛みに慣れると組織損傷に気づかず生命に関わるから。

4)痛みは慢性化する(長期増強)

痛みの電気信号が悪循環で脊髄・脳に入力され続けると下行性疼痛抑制系(痛みのブレーキ)の機能低下が起きる。

脊髄後角や海馬、扁桃体、小脳で可塑的変化が生じ痛覚過敏になる。

どのような痛みでも慢性化する可能性があるので我が国では数千万の慢性痛の人がいる。

5)遅発性筋痛

ケガをした数時間後から数日後にかけて痛みがつよくなる。

6)医師がレントゲンやMRIで見ている所見は、痛みの原因ではなく外力によって生じた結果、筋短縮によって生じた結果をみているにすぎない。だから新鮮な骨折以外は意味がない。

「神経根症」は神経根が圧迫されて生じるということだが、昔はそう言われていたということで今では否定されている。


筋筋膜性疼痛症候群の診断基準 (Simons,1990)

●大基準

  1. 局所的な疼痛の訴え

  2. 筋筋膜の圧痛点から関連痛として予測しうる部位での疼痛あるいは違和感

  3. 触れやすい筋肉での索状硬結の触知

  4. 索状硬結に沿った一点での強烈な庄痛点(ジャンプサイン)の存在

  5. 測定可能な部位では、可動域のある程度の制限

●小基準

  1. 圧痛点の圧迫で臨床的疼痛の訴えや違和感が再現する

  2. 圧痛点付近で索状硬結に垂直に弾くような触診を加えたり、圧痛点に注射針を刺すことで得られる局所的ひきつり反応

  3. 筋肉を引きのばしたり(ストレッチング)、圧痛点への注射により疼痛が軽快する

    診断には大基準5項目すべてと、少なくとも1つの小基準を満たすことが必用


A氏の場合

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右半身にギユーッと締め付けられるような、うずく痛みが30〜40分続く。その後は重いズーンとした痛み。圧迫されるような、キリキリしたような痛みもあり。

特に背中や頚につよい。

不全型線維筋痛症といってもよい。

部分的なものが筋筋膜性疼痛症候群で全身に広がったものを線維筋痛症という。

「ギユーッ」「ズーン」「キリキリ」などオノマトペで表現される痛みは慢性痛の特徴だ。

私は受傷3ヶ月半に診察した。

右斜角筋、右胸鎖乳突筋、右上部僧帽筋、右大胸筋などに強圧痛を認めた。

不意打ちの外傷、傷そのものの痛みが広がった、または咄嗟の仰け反り、転倒防止の踏ん張りや捻れが筋痛を起こした、この両方が混在したと思う。

恐怖、不安も痛みの慢性化の追い風となる。

今回の外傷を契機として生じた慢性痛(筋筋膜性疼痛症候群)=不全型線維筋痛症と診断した。


    












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by junk_2004jp | 2018-01-21 02:13 | Comments(0)