2005年 09月 30日
[痛みの定義とメカニズム][痛みにおけるPGE2とBKの役割][より確実な疼痛抑制効果が期待できるザルトプロフェン] 「痛みとは」に追加しました。 ポリモーダル侵害受容器は未分化で、「受容器」であるとともに「効果器」でもあるのですね。 「サブスタンスPなどの神経ペプチドが分泌され、神経性炎症が起こり、この神経性炎症が再び侵害刺激を引き起こすという悪循環を生じ、痛覚過敏状態に至ると考えられている」 神経性炎症ということは案外知られていません。打撲や捻挫の早期に局所麻酔を注射すると、神経性炎症の悪循環が絶たれるので、以後の経過は雲泥の差です。 「注射しておきましょうか?」「何の注射ですか?」「痛み止めの局所麻酔です。」「それなら我慢しますので注射はいりません。」 このような会話は診察室でよくあります。「損傷」と「痛み」は分けて考えるべきです。損傷の程度に応じた固定が必要ですが、ほとんどの場合は、神経性炎症による腫れと痛みの継続が支障を来すものなのです。 プロスポーツ選手は、局所麻酔を打つような治療を積極的に取り入れていかれたらいいでしょう。ところが、痛み止めの注射を打つことは、治療にはならない、かえって無理をして悪化させる、といったイメージがつきまとっていますね。 「脳と末梢の痛みの悪循環」「末梢における神経性炎症による痛みの悪循環」この2重の悪循環を早く遮断することです。そのような意味で圧痛点ブロックは副作用もないし、簡単で恐くはないので積極的にとり入れていけばよいでしょう。「一時押さえの痛み止めの注射」といったマイナスイメージから脱却できますかな。 ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-30 16:01
| 痛みの生理学
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2005年 09月 29日
![]() 症状 母、示指の屈曲障害を主訴として来院してくる(図71)。軟式テニス、タイプ、ピアノなど前腕の回内、肘伸展運動の繰り返しのあとに発生しやすい。前骨間神経症候群は回内筋症侯群と同じものと考えてよい。 視診・触診・誘発テスト 前骨間神経麻痺。 Perfect O test 母指と示指できれいな○をつくらせる。母指IP(指節間)関節と示指DIP(遠位指節間)関節の屈曲ができないため図72のようになる。 原因 正中神経の前骨間神経分枝部(円回内筋、中指深指屈筋の腱性起始部)での絞宛(図73)。 運動神経のため、知覚障害はない。 治療 ステロイド、非ステロイド抗炎症剤などの内服、局所の安静。2~3ヵ月経過しても回復しないときは、手術的治療を行なう。これは前骨間神経を展開して除圧を行なう。回復しないときは腱移行術を行なう。 「頚肩腕障害の診断と治療」 (金原出版) ![]() 6月ごろより、母指と示指できれいな○をつくることができない。特に原因となるような反復動作をしたことはない。知覚は正常。正中神経の前腕部での運動枝の絞扼性神経障害と言われているが・・。 患者さんには教科書を見せて説明し、現在低出力レーザーを当てる治療をしている。少し改善のきざしがある。 このような疾患は、極めて希なので、うんちくを述べるほどの知識はありません。(2例目)教科書を参考にしながら、あるいはインターネットで検索して、説明と同意を得ています。 ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-29 17:25
| 痛みの生理学
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2005年 09月 28日
医療の質の維持向上のために、EBMに基づく医療ガイドラインが重要な役割を担うことは、だれもが認めるところである。もちろん、今までも日本の医師がエビデンスなしに診療を実施していたわけではない。各医師が、さまざまなエビデンスを収集蓄積し、それを評価して現場の特性にフィードバックさせ、各医師の方針、すなわちガイドラインが随時決定され、それに基づいて診療が行われてきた。このことは今後も変わることはない。そもそも医療とは、個別性が強いものであり、いかなるガイドラインも個別の状況や価値判断を排除するものではない。 現在、EBMを考える時のエビデンスは、疫学的手法に基づく工ビデンスがきわめて強く重視されている。エビデンスの重要性を認めつつも、ここにやや問題点があると考える。例えぱ、EBMについて検討した、厚生労働省の「医療技術評価推進検討会」の報告書のなかに、「科学的な根拠を創り出すために、現在の病態生理中心の研究を、患者を対象としたランダム化比較試験のような研究へ移行させることが必要と広る」という部分がある。この文章は、間違いだと思う。医学の研究を「病態生理の研究」から、「ランダム化比較試験の研究」に「移行させて」しまっては、医学は成り立たない。「病態生理の研究」の基盤に立ってランンダム化比較試験の研究」を導入するというなら理解できるが、移行させることは大問題である。現在の医学知識のなかで証明できる疫学的なエビデンスは、そんなに完全無欠のものではない。 医師は、EBMに基づく医療ガイドラインに従って、まったくそのとおりに診療すべきだという意見は間違っている。ガイドラインの目的は、あくまで「参考とすべきガイドライン」である。各医師が、そのガイドラインの採用の可否を判断するのであり、仮にガイドラインに沿わない医師がいたとしても、それだけで直ちに「誤り」だとすることがあってはならない。 一方、医師は自分勝手な診療をして良い、それが医師に許された「医師の裁量権」であるという意見も問違っている。医師は、自らが判断するエビデンスに墓づいて、医師としての良心に従い、患者さんに対して最適の医療を提供する義務がある。それが医師の裁量なのである。外部からの圧力、例えぱ、アメリカのHMOのような保険者の医療への介入などで、その義務を絶対に放棄してはいけない。医師の裁量で、最適の医療が提供される権利は、患者さんの方にある。、医師の裁量とは、医師の権利ではなくて医師の義務だと考えるべきである。 H14年2月20日医師会新聞「視点」より ___________________________ まさにその通りです。特に痛みについては個別性が強いものです。医師の説明の仕方一つによっても大きく変わってきます。「ヘルニアガイドライン」は役に立ちませんし、海外の腰痛ガイドラインにしたって、生理学的にどのような病態なのかは全くおかまいなしです。 「病態生理の研究」の基盤に立ってランンダム化比較試験の研究」を導入するというなら理解できるが・・・。 ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-28 17:46
| 医療不審
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2005年 09月 27日
愛知医科大学痛み学講座 公開シンポジウム 慢性痛と運動系 ~運動器の痛みを探る~ 出席してきます。 整形外科痛みを語る会 このような会があるのですね。long_field先生どうですか? 愛知医師会 シリーズ 「痛み」 愛知医科大学医学部痛み学(ファイザー)寄附講座 熊 澤 孝 朗 教授 __________________________________ 痛みとかしびれは電気生理学的にいえばスイッチonの状態、麻痺はスイッチoffの状態と思います。電気を起こすエネルギーが必要です。それが外力か情動(交感神経緊張)か。 絞扼性神経障害ではワーラー変性がおこり、伝導が障害される。(不完全~完全) 二次的に「発芽」ということが起こり、CRPStypeⅡという状態になることがある。 絞扼性神経障害は「知覚麻痺」「運動麻痺」だと思っている。字のごとく神経繊維が締め付けられているためで外科的に開放してやらなければ助からないものと思っている。 一方、神経繊維の炎症程度という概念があり、それは保存的な治療(シーネ固定、注射など)で回復することの多いものーたとえば手根管症候群ーも絞扼性神経障害にいれているが、疑問だ。 もしそうならば、「絞扼性神経障害」の範疇ではなくて「神経炎」の範疇をつくるべきだろう。「神経根炎」もよく使われる言葉だが、ヘルニアや脊柱管狭窄症を「絞扼性神経障害」に入れているものをみない。 また、神経炎が痛みやしびれを作るということは生理学的に説明されなくてはいけないのだが・・・。 このような意見は常識的な見解と違うことは十分承知しているが、あえて疑問として提起してみたい。 多くの整形外科医も何か変だなと思いつつも、成書にも書いてあるし、専門の先生も言っていることだし、いまさら異を唱えるのも無知をさらけ出すようで・・・・というのが案外多いのでは? ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-27 08:31
| 痛みの生理学
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2005年 09月 24日
絞扼神経障害の診断と治療 <54分>長野 昭 浜松医科大学整形外科学教室 インターネットm3.comで勉強しました。第77回 日本整形外科学会学術集会の教育研修講演のときの講演をみることができます。便利な時代になったものですね。54分はちょっと長かった。 最も多いのは手根管症候群、次は肘部管症候群。 手根管症候群は保存的治療でたいがいよくなるが肘部管症候群は手術が必要。後骨間神経症候群や肘部管症候群の手術の写真はありましたが、手根管症候群の手術の写真はありませんでした。 絞扼された神経は砂時計状にくびれていました。手根管症候群もこのような写真があればいいのですが。 鑑別すべき疾患は、頚の神経根障害といっていましたが、頸椎の神経根障害は絞扼性神経障害の種類の表にはでていませんでした。 梨状筋症候群も一例は臀部の注射で著明に改善し、もう一例は手術をした、その時の写真がでていましたが、絞扼されている様子がわかりませんでした。 絞扼性神経障害は神経が砂時計状にくびれたような状態で、外科的に開放しないともとに戻らないものと思います。症状は神経麻痺です。私はこのように理解しています。手根管症候群は最も多い絞扼性神経障害だそうですが、そのなれのはてのものをほとんど見かけません。なぜなのでしょうか? 頚部の神経根障害をなぜ絞扼性神経障害のグループに入れないのでしょうか? ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-24 23:37
| 痛みの生理学
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2005年 09月 22日
long_field先生(長野先生にしておきます)が言われているように、「・・症候群」というような病名が混乱の一つの原因になっているのでしょう。 「胸郭出口症候群」という病態があるのかないのか・・・ あるとすればどのようなメカニズムでどのような症状なのか? 長野先生は、外傷後に「胸郭出口症候群」をきたした症例を経験されました。それは外傷による血腫や瘢痕組織が腕神経を絞扼したためだと思われます。 同じように「梨状筋症候群」もあるのかないのか・・・。坐骨神経が梨状筋のところで、絞扼されるとすれば、何が原因なのか、外傷によるものか、奇形か、腫瘍か。そのようなことがなくておきることがあるのか? 症状はどうなのか? ![]() 一般に使われている「いわゆる胸郭出口症候群」や「いわゆる梨状筋症候群は絞扼性神経障害ではないと思います。 逆に「椎間板ヘルニア」という病名も混乱の原因になっています。MRIでヘルニアがあるということがわかれば「椎間板ヘルニア」という病名になりますが、それが患者さんの愁訴とどのような関係があるのかは病名からは分からないのです。 用語の統一が必要 「椎間板ヘルニアによる馬尾神経の絞扼性神経障害による膀胱直腸の麻痺」 「外傷性瘢痕組織による胸郭出口部における腕神経の絞扼性神経障害」このような長ったらしい病名にしないと統一した言語がないので混乱するのです。 ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-22 16:22
| 痛みの生理学
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2005年 09月 20日
14日に女優、安達祐実(24)と入籍したスピードワゴンの井戸田潤(32)が、新婚早々松葉づえ生活を余儀なくされていることが18日、分かった。右足付け根の股関節に炎症を起こし、激しい運動ができない状態という。 所属事務所によると、関節炎の原因は結婚会見前日の13日に行ったテレビ番組の山歩きロケ。普段歩いたことのない距離と急傾斜を歩き、「プロ野球の投手が1試合投げきった後と同じぐらいの疲労」(担当医師)と診断されたという。 会見当日の14日は痛みを感じなかったが、徐々に痛みがひどくなり、17日には激痛に耐えきれず病院へ駆け込んだ。 医師から激しい運動を禁止されており、19日の映画のPRイベントには出席するものの、予定していた野球のバッティングの実技は中止するという。安達との“あま~い”生活が、一転“いた~い”生活に。井戸田に焼きもちを焼いた神様のいたずら? (サンケイスポーツ) - 9月19日8時3分更新 TVでは「単純関節炎」というようなことを本人が言っていらっしゃいました。これだけの情報から、想像ですが、やはり生物・心理・社会的な疼痛症候群のように思います。 ストレスとは何も苦しいことばかりではなくて結婚、就職、入学、出産などのおめでたいときにもあると言われています。 若い男性が山歩きをしたぐらいでこのような痛みに襲われるのは説明つきませんね。痛みとはこのように、ちょっとしたことがきっかけで始まるものです。これが腰におこれば「ぎっくり腰」「坐骨神経痛」、頚でおこれば「寝違え」、顎でおこれば「顎関節症」などといっているわけです。 しばらくで治るものと思いますが、私なら、股関節周囲の圧痛点に局所麻酔を注射してやります。その場でよくなるかもしれません。 実際、このようなケースが多いんです。で、説明に四苦八苦するのです。このお医者さんも苦しい説明ですね。痛みを取ってやることによって説明もしやすくなるものです。 ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-20 13:46
| 症例
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2005年 09月 19日
睡眠中、脚の筋肉に、ぴくん、ぴくんというけいれんが連続して起こる「周期性四肢運動障害」も、中途覚醒の原因の一つになります。これもお年寄りによくみられ、睡眠中に何度も蹴るような動作をします。けいれんが起こって脚が動いているときには、脳が覚醒することもあります。しかし、覚醒時間がごく短いため、自分ではわからないことも少なくありません。 朝布団がずれていたり、下に落ちていることがよくある、起きたとき足がだるい、という場含には、周期性四肢運動障害の可能性も考えたほうがよいでしょう。 「不眠で悩む人に」 NHK出版:きょうの健康シリーズ 高齢者に多いです。芍薬甘草湯という漢方薬を寝る前に一包飲みます。効果がありますよ。 毎日の診療にはこのような小耳に挟んだちょっとした知識が役に立ちます。(対症療法専門医^^) ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-19 00:13
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2005年 09月 18日
策定委員会の委員は1人を除き全て大学の先生であり、残る1人も国立病院の先生です。どうして開業医が入っていないのか非常に不自然な点です。・・・・策定委員会の委員に開業医が入らないのは保存療法軽視、手術優先につながりかねません。その結果内容で納得できない点がいくつかあります。・・・・・ 次に、強い症状を呈するか病状が長期に及ぶ腰椎椎間板ヘルニアは10-30%が手術にいたる、としています。しかしこの数字は際立って多く、解説の中にも各国の統計が出ており、手術になるのは米国は日本の500分の1、英国は1000分の1としています。我々開業医からみて、10-30%は驚くべき数字です・・・ 診療ガイドラインの作成方法を見ますと、英語・日本語の文献を検索し、論文の選択が行われます。策定委員会の委員に入っていなければ保存療法にとって有用な文献であっても採用されないことが考えられます。 これは腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインについてある整形外科の開業医が書いたものです。私も同感ですので無断で拝借しました。 全く使い物にならないガイドラインです。ヘルニアのガイドラインという発想そのものがおかしいのです。ヘルニアそのものが治療の対象になるということではないのですから。対象は痛みであり、痛みとヘルニアの因果関係が不明なのです。。馬尾症候群以外のヘルニアの麻痺を見たことがありますか?ヘルニアによる身体障害者を見たことがありますか?下肢が麻痺してしまった人を聞いたり見たりしたことがありますか。歴史上でも、世界に目を向けても私は見たことがないのです。 ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-18 00:17
| ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾
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2005年 09月 17日
手根管症候群の治療は不用 手根管症候群とは、手根骨と横手靱帯によって形成される空間で、正中神経が圧迫されて、掌側の拇指~第4指の半分がしびれる。夜間に強い。手を振ると軽減、手関節の軽度背屈位でシーネ固定で軽減。・・・・・教科書的にはこのような記載がされています。 これはどうもあやしいです。神経症状ではないと思います。神経症状とは神経が絞扼されて麻痺を呈することで、神経脱落症状ともいいます。 絞扼性神経障害の代表的なものとして「肘部管症候群」があります。 ![]() この写真は肘部管症候群のものですが特徴的な筋萎縮neurogenic muscle atrophyがみられます。第4指の半分と第5指は知覚脱失(無感覚)です。 一方、手根管症候群は明らかな筋萎縮はみられませんし、知覚脱失もみられません。これを肘部管症候群と同じ絞扼性神経障害に分類するべきではないと思います。 知覚脱失(無感覚)もジンジンも「しびれ」と表現するからややこしいのです。 絞扼性神経障害は基本的には保存的治療で改善しないと思います。一方、手根管症候群はなんやかややっているうちに治るものです。 手を振ると楽になるということから、きっと血行に関係しているものと思います。神経に伴走している静脈が手根管の部分でなにかしらの影響で流れが悪くなるのではないでしょうか?手をふれば、体温計の水銀のように手に滞った血液が流れるのではないでしょうか。 ![]() ■
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by junk_2004jp
| 2005-09-17 01:38
| 痛みの生理学
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