人気ブログランキング | 話題のタグを見る

心療整形外科

junk2004.exblog.jp
ブログトップ
2010年 10月 21日

椎間板ヘルニアが痛みやしびれを起こすか?

掲示板に次の質問がありましたので考えを述べます。
「インターネット掲示板に、椎間板ヘルニアの正体は繊維輪など深部の組織の損傷。この時に障害部位を防御しようと脳が筋収縮を促し、痛みの増強を図る。いわゆる、痛みの悪循環と言う奴だ。この悪循環だけが残った物が劇症腰痛慢性型の正体。」と書かれていたのですが、本当なのでしょうか?


ヘルニアの痛みについて述べるとき、次の2つを考えてみる。

①ヘルニアが神経を圧迫するために下肢に痛みやしびれが生じる(根性痛)。

②ヘルニアという組織損傷のために、おもに腰部に痛みが生じる。

①は生理学的にそういう事実が示されていません。

②について考えてみます。これは、なにもヘルニアだけに限ったことではありません。椎体の圧迫骨折、半月板の損傷も同じことがいえます。

ヘルニアになるのはたぶん次の二つがあると思います。想像です。

(1)いつのまにかヘルニアになっていた。

(2)大きな外力が加わって一挙にヘルニアが生じた。

_______________

(1)いつのまにかヘルニアになっていた。

日常生活動作、姿勢あるいは慢性的な筋肉のこわばりなどのために、いつのまにかヘルニアが生じていた。

このようなケースは考えられる。60歳以上の健常者の79%にヘルニアがみられたという報告がある。

この場合はたぶん、ヘルニアによる痛みはないものと思われる。

(2)大きな外力が加わって一挙にヘルニアが生じた。

たとえば、重いものを持ち上げたとき、転倒したとき、咳をしたときなど、急激に大きな力が加わってヘルニアが生じた。

筋肉のスパズムが先か、ヘルニアが先か、あるいは同時か?

痛みの治療と構造の治療は別問題で、並行して行えばいいのです。

この場合は痛みの治療だけでいいのです。

>この時に障害部位を防御しようと脳が筋収縮を促し、痛みの増強を図る。

外傷が生じると反射的に筋収縮が起こるが、一過性ではないか。

ヘルニアの部位と痛い筋肉とはあまり関係がなさそうだ。

ヘルニアの有無にかかわらず、同じ受傷機転で同じような筋肉を傷める。



# by junk_2004jp | 2010-10-21 13:53 | ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾
2010年 10月 20日

第6回MPS研究会

16日、17日に大阪で第6回のMPS研究会がありました。

16日は、小山なつ先生(滋賀医大・生理学)の講義を受けました。

17日は会員の医師によるプレゼンテーションがありました。

会員で脊椎脊髄指導医のA先生のお話によると、A先生の努力で出身医局ではMPSはかなり知られていて手術件数が減っているとのことです。

そういえば、12日には東京の脊椎脊髄指導医の先生が私のところに見学にいらっしゃいました。

やはり、手術成績に疑問をもっていらっしゃるとのことです。
第6回MPS研究会_b0052170_18174328.jpg


# by junk_2004jp | 2010-10-20 18:18 | MPS
2010年 10月 15日

へんな裁判

富山大に賠償命令 医療過誤で3500万円

判決によると、女性は腰や両脚に痛みやしびれを訴え01年3月に入院、その後手術を受けた。

術後も状態は改善しなかったが、病院側は再手術などの措置を取らなかった。

女性は転院先の病院で3回手術を受けたが、両脚に障害が残り、自力歩行できなくなった。


これが事実ならとても変な裁判だ。

ヘルニアの手術をしてもよくならない人はたくさんいる。

Yahoo知恵袋のヘルニア術後治らないという相談だけでも50件ある。

その場合は再手術をしなければ有罪となるのか???

転医先の病院で3回も手術を受けたが障害が残ったのは有罪ではないのか?

麻痺なら早期に除圧しないと身体障害になるのでこの裁判長は正しいのだが、痛みやしびれはヘルニアが原因ではない。

4回も手術をすれば「Failed Back Surgery Syndrome」=CRPSになる確率は増える。

気になるのは後の医師の説明だ。証人の医師の説明が聞きたいものだ。

裁判長は医学に関しては素人。

私の知っている人はヘルニアの手術をして治らず、固定術をして一層悪くなった。

椎間板ヘルニアは手術してもしなくても同じ結果

へんな裁判_b0052170_1295172.jpg


# by junk_2004jp | 2010-10-15 22:55 | ヘルニア脊柱管狭窄症の矛盾
2010年 10月 14日

わかさ12月号

わかさ12月号_b0052170_21553438.jpg
わかさ12月号_b0052170_21555447.jpg


わかさ12月号別冊付録にでています。

膝痛のトリガーポイントブロック

多くは内側広筋のMPSです。

外側広筋、大腿直筋、ハムストリング、腓腹筋などもあります。

関節痛のほとんど(リウマチ、痛風などの炎症性疾患をのぞけば)はMPSです。


# by junk_2004jp | 2010-10-14 22:02
2010年 10月 10日

日本の保険制度そのものが過剰検査・過剰診療の温床

筋骨格系の痛みの診断において、MRI、CT,レントゲンなどの画像診断は

痛みを伴うことのある特異的な病理所見を有する疾患の有無を調べるものです。

それは、「悪性腫瘍、感染症、骨折など明らかな損傷、リウマチ及びその周辺の炎症性疾患」

これらがあるからといって痛いとは限りません。痛みの治療と並行してこれらの疾患の治療が必要なことがあります。

なぜそう言い切れるかということですが、痛みは電気現象です。電気現象が画像に写ることはありません。

また、痛みは「experience、体験」と定義されています。他人の体験が画像に写ることはないのです。

ただし、痛みは防衛的に筋肉を緊張させますから、筋肉の緊張が続くと画像上に変化が現れてきます。

変形している、軟骨が減っている、ヘルニア、狭窄になっているから痛いのではなく、これらは痛みの結果と考えたほうが理屈にあっています。

日本の保険制度そのものが過剰検査・過剰診療の温床_b0052170_11271945.jpg


ところが、慢性痛の患者さんは袋に入り切れないほどのフイルムを持ってきます。

この問題は、誤診につながるだけでなく、患者さんにまちがったイメージを植え付け一層治りにくくしています。

タクちゃんが掲示板に貼ってくれましたので転載しておきます。

雑誌新医療 2008年4月号

金沢大学院医学系径血管診療学
放射線医学講座 教授
第67回日本医学放射線学会会長
松井修氏インタビュー

==以下引用==
日本の放射線診療は、現在商業主義に走りすぎているのではないでしょうか。PET/CTなどに代表される最新の高性能な画像診断機器が、大病院から市中のクリニックにまで導入され、なんの制限もなく使用されています。専門医の数が少ないと言われる中、機器ばかりが普及し、医療現場の受け入れ態勢がその動きについていけていないのが現状です。そのために、被爆や、専門医不足、過剰検査など、現在では様々な問題や課題が噴出しています。

=中略=

日本の保険制度そのものが過剰検査・過剰診療の温床
-過剰検査過剰診療の背景について、お聞かせください。
 
日本でCTの台数か多いのは何故か。それは我が国の保険制度のためです。これまで放射線検査は、患者の自己負担は少なく、保険によって検査費が賄われてきたため、医師はある面では好き勝手に検査してきました。放射線科はCTやMRIなどの高額医療機器を次々に導入し、医療に貢献してきましたが、それを支えていたのは保険制度です。

日本は出来高による診療報酬制度によって、患者が来院したら、とにかく網羅的に検査をする傾向があります。特に内科や外科はそうです。

欧米では、保険制度の違いから、自己負担する患者や、民間の保険会社などが必要以上の検査をしないよう、医療者側に常に働きかけています。

欧米の放射線関係の論文には、費用対効果に関する・記事か多いのですが、日本ではほとんど見られません、保険制度は、日本の医療を支えてきた優れた制度です。しかし、現在保険が医療全体を支えきれなくなり、様々な問題点や矛盾が噴出してきているのが現状です。


# by junk_2004jp | 2010-10-10 11:34 | 医療不審